わたしは、子どもの頃「漢字を書いて覚えた」世代だ。
学校からは漢字練習帳に毎日ひたすら漢字を書くようにいわれた。
当時はそれが当たり前だった。
1つの漢字につき10個とか20個書く宿題が出た。まるで「写経」だ。
漢字の構成や音にこだわらず、ひたすら「書いて」覚えるーこの方法は「自転車に乗るための練習」に似ている。小脳を使って動作を体に染みこませる、といった感じで。
漢字をただ書くだけでは覚えられない人がいる
過半数の人は「漢字をひたすら書く」方法で漢字を書けるようになる。
ところが、我が家の長男のように「ただひたすら書いても漢字をちっとも覚えられない人」がいるのだ。いわゆる書字障害と呼ばれる人である。
そういう人にとっては「漢字を書くこと」=単なる「作業」である。「書く」ことが漢字の認識につながらない。長男がそうである。不器用な人に多い。
ひたすら書かなくても漢字は覚えられる
でも、漢字をひたすら書いて覚えられなくても、しかるべき方法を取れば漢字を覚えられる。
そのことを長男との漢字練習を通して知った。
漢字の構成要素を「視覚的に」認識して覚える
漢字を書いて覚えられない人は、漢字の形それ自体をしっかりと「視覚的に」認識して脳に記憶させることをお勧めする。
たとえば「真」という漢字は「十」・「目」・「一」・「ハ」という文字から構成される。
「真」=「十」・「目」・「一」・「ハ」と覚える。
ほかにも、たとえば「勢」=「土」+「ル」+「土」+「丸」+「力」と(ツチ・ル・ツチ・マル・チカラ)と覚える。
漢字の書き順を描いた動画(アニメーション)も有効だ(漢字の書き順動画を載せたアプリやサイトはたくさんある)。
長男は、漢字の書き順のアニメーションを見て確認しながら、漢字を視覚的に脳に記憶させている。
「部首+意味」「構成要素+発音」をリンクさせる
また、漢字の部首+意味、漢字の構成要素+発音をリンクして漢字を覚えるのも有効だ。
たとえば「持」という漢字は、手で物を持つから「てへん」だし、右側にある「寺」という漢字と同じく「ジ」と読む。
いろいろな方法を試してみる
「漢字を書いて覚えるのが苦手だから、上の例のように工夫して覚えた」という人が世の中にたくさんいることを、長男を通して私は知った。
どの方法を使ったら覚えられるのかは人によってそれぞれ違う。
だから、いろいろな方法を試してみることが大切だと思う。
わたしのように小さい頃から「漢字をひたすら書いて覚える」方法で漢字を覚えてきた者は、漢字の形や構成要素を視覚的にしっかりと認識して漢字を覚える経験がなかったし、漢字の音が構成要素に起因することも意識してこなかった。
でも、改めて考えてみると、「ただひたすら漢字を書いて」覚えるよりも、漢字を多角的に認識して漢字を覚えるほうが漢字を忘れにくいはずだ。
複数の感覚を使って漢字を覚えるほうが漢字が記憶に定着しやすく忘れにくい。
人間誰しも年をとっていくと、漢字を思い出せないことが増える。
そんなとき、漢字を視覚的に認識して覚えたり、意味や音(おん)とリンクさせて漢字を覚えておけば、漢字は忘れにくいんじゃないかと思う。
「漢字は書いて覚える」みたいな「当たり前」を一度疑ってみる。長男との漢字学習に悪戦苦闘した経験を通して、そんなことを感じている。