木村泰子さんといえば、映画「みんなの学校」で知られている大阪府立大空小学校の初代校長である。
映画「みんなの学校」については以前も取り上げたことがある(映画「みんなの学校」と今の学校の現状について思うこと・こういう校長先生もいるのだ)。
わたしは以前、木村泰子さんの講演会を聞きに行ったことがある。
遠くから拝見しただけだが、実物の木村泰子さんは、とても気さくな方にお見受けした。
木村泰子さんの本には、実際の体験を通して生み出された、強くて深い言葉が載っている。
木村泰子さんの言葉は、どんな子にもひとりひとり、体当たりで丁寧に対応してきたことを示す証である。
木村泰子さんの本を読むと、それまで在籍していた学校では厄介者(強い言葉で恐縮だが、事実そうだったと思う)扱いだった子どもたちに木村泰子さんが真摯に対応した様子が綴られている。
従前の学校で排除されていたこどもたちが発する言葉に、木村さんが心を寄せて対応していたことが、木村泰子さんの著書から伝わってくる。
うちの長男も学校から排除されかかったことがあるから、よく分かる。
木村さんの言葉は、経験したからこそ語れる言葉である。
公立小学校には、複雑な家庭環境が原因で荒れるお子さんも少なくない。
木村さんをはじめとする大空小学校の先生方は現場で相当に試行錯誤されたに違いない。
本当に頭が下がる。
少数派が多数派に代わることはない
その一方で、全国の学校が大空小学校のような学校に変貌することは、それはそれはもう、かなり難しいとわたしは思っている。
そもそも学校は保守的な組織だ。
短期間で学校が大きく変わることはやっぱり期待できない。
大空小学校は、一般的な学校で「マイノリティー(少数派)」の子どもたちが「マジョリティー(多数派)」で居られる学校だとわたしは思う。
大空小学校でやっていることは、実際の学校現場で「多数派」の子どもたちが「少数派」として存在していたのではないか。
「多数派」が既得権益を失う変革は、今の学校で簡単にはできないだろう。
少数派と多数派が逆転して、「個性的であることが大事」・「発想の豊かさが大事」だと学校が言い始めたら、今度は、現在学校で上手くやっている多数派のこどもたちの居場所がなくなる。
学校に限らず、どんな組織でも、多数派が既得権益を失う変革は困難だ。
学級担任制が少しずつ解体されたり、教科担任制が少しずつ導入されたり、1クラスの生徒数が少しずつ減ったりして、少しずつマイナーチェンジをしながら、学校が変わっていくのを待つしかないのだろう。
基礎学力の定着について
そして、木村泰子さんの著書を読んでいて、ふと思う。
「学校での読み書きそろばんの徹底」について木村泰子さんはどう思っているのだろう。
木村泰子さんの著書を読んでいると、「勉強はやる気になったときにやればいい」という記載が散見される。
うちの長男は、進学校でない高校に通っている。
長男が通う高校では、経済的に厳しい家庭の子はアルバイトをしている。
物価上昇で家計が苦しくなり、高校生のこどものアルバイト代が家計を支えているのだ。
高校生になると、純粋に学業に専念したくても専念できない生徒が出てくる。
「勉強をしたくても時間がない」状況になる生徒が少なくない。
だからこそ「アルバイトする年齢に達していない」時間的余裕がある小中学生のうちに基礎的な学力をつけてから高校へと送り出してあげたほうがいいんじゃないかと私は思うのだが。