映画「みんなの学校」と今の学校の現状について思うこと

「みんなの学校」という映画を最近知った。

「みんなの学校」は、大阪市立大空小学校でのこどもたちの様子を追ったドキュメンタリー映画である。

 

大空小学校は、いわゆるインクルーシブ教育を実践している学校である。大空小学校では、重度の知的障害がある子も同じ教室で学んでいる。

大空小学校のように同じ教室、とまではいかなくても、インクルーシブ教育を支持し、重度の知的障害がある子も同じ学校の敷地内で学んだほうがよいという考えの専門家(小児科医)も世の中にはいる。

 

保護者の意識が変わりつつある

映画「みんなの学校」を見て、非常に複雑な気持ちになった。

大空小学校での実践は本当に素晴らしいと思う。

けれども実際は、日本の教育はインクルーシブ教育とは真逆を進んでいる。

大空小学校は、現実の小学校とは大きく乖離しているのだ。

支援が必要な子たちは、小学校入学前の発達検査でIQが基準値を満たさない場合、

・「普通学級では先生の手が足りないから、適切な支援が受けられない」
・「支援学級や支援学校では手厚い支援が受けられる」
・「今の状態で普通学級に進学しても、こども本人がつらいだけ」

という理由で、支援学級や支援学級を園からすすめられるのが一般的である。

「支援学級(学校)に行った方がお子さんのためですよお~」が決まり文句である。

結果、昔ならば支援級に居た子どもが支援学校に押し出される形になっている。

「みんなの学校」には、言葉を持たない「マアちゃん」という子が登場する。

「マアちゃん」のように言葉を持たない子も昔は、小学校の普通学級と同じ敷地内にある支援学級にいたものだが、今は当然の如く支援学校に行くのがスタンダードになっている。

親も「手厚い支援が受けられたほうがいい」という理由で支援学級や支援学校を選択するのが主流だ。

今は「支援が必要な子であっても地域の学校で育ってほしい」と普通学級を選択する親はかなり少数派になっていると感じる。

支援学級に進学することについて保護者の抵抗が薄くなったし、適切な支援を受けられるから支援学級のほうがいいという保護者が昔よりも増えてきた。

周りの保護者も「支援学級や支援学校に行った方が適切な支援を受けられる子を、わざわざ普通学級に通わせるなんて、こどもを虐待しているようなもの」という意識である。

周りの保護者がそういう意識だと、支援が必要な子は普通学級に居づらい。また、支援学校や支援級のほうが同じ境遇の親が居て助け合えるからという理由で、支援級や支援学校を選択する親がますます増えている。

 

インクルーシブ教育(理念)と現実との乖離

大空小学校の元校長先生だった木村泰子氏やインクルーシブ教育を支持する大学の教授や医師は「いろいろな子どもが同じ学校に居ることが、多様性を認める社会の形成に繋がる」という考え方である。わたしもその意見に同意する。

ところが、現実は「手厚い支援が受けられる」支援学級・支援学校を選択する保護者がどんどん増えている。一般の小学校では教師不足で手が足りず、支援をしてもらえない心配があるからこそ、保護者は支援学級・支援学校を選ぶ保護者の気持ちもよく理解できる。

我が家の長男も、10年前のまだ学校に余裕があった時代だからこそ、普通学級に進んでも学校は個別対応する余裕があって無事に小学校を卒業できたのだが、今だったらうまくいったかは正直、分からない。

 

安心して通える普通学級を

教師不足の昨今、今の学校(普通学級)は手がまったく足りていないのが確かだ。

そんな中で、言葉を持たない子どもが普通学級に在籍していたら、学校現場の負担は相当大きくなるだろう。

現状は、言葉を話し学力的には問題ない子が普通学級から支援級に多数押し出されている。

大空小学校の理念と実践は素晴らしいと思うが、今の学校が大空小学校に行きつくまでには相当高いハードルがある。

まずは、支援級に通う子でも安心して過ごせる普通学級を作ることから始めたほうがいいんだろう。

数年後には「気になる子」はクラスの半数を超えるかもしれない。つまり、小学校入学時に「配慮のお手紙」を保護者が作成して担任の先生に渡したり、小学校入学前に校長先生と個別面談をしなければならない子が、クラスの半数を占めるようになると思う。

そんな状態になっても学校は今まで通り「気になる子」を特別支援学級に送り込んで、今まで通りの授業を続けるつもりなのだろうか。

 

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