タイトル:家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。
著者 :菅野 久美子
出版年 :2020年
出版社 :角川書店
我が家では私だけでなく母もこの本を読んでいる。
高齢者である母もこの本を興味深く読んでいた。
親がそろそろ介護が必要になりそうな人が読むと良い本だと思う。
本の概要
ざっくりいうと、
この本は前半に高齢者の世話代行サービスと孤独死について、
後半に現代のお墓・葬式事情について書かれている。
今回はまず、
この本の前半の高齢者見送りサービス・孤独死の感想について述べる。
初めて知る人には衝撃的な話
衝撃的な話として、
室内のゴミの山の中で亡くなっていた孤独死のケースがこの本では紹介されている。
特殊清掃業者といって、
自宅で亡くなった人の部屋の掃除を専門に扱っている業者がいるそうだ。
この本には特殊清掃業者へのインタビューが掲載されている。
孤独死の現場に関する描写が生々しいが、
これが現実なのだろう。
孤独死については以前(孤独死と家族遺棄社会)に書いた通り、
介護保険制度でケアされている老人よりも、
何もケアを受けられない中高年に起きる悲劇である。
ただ、どんな人でも孤独死する可能性がある。
家族と同居していても、
家族が外出している間に亡くなったり、
家族が居る間でも浴室や寝室で倒れて亡くなることだってある。
若いうちは多少無理をしても大丈夫だけれど、
孤独死を防ぐためには、
いくら忙しいとはいえ40の声を聞く頃までに自分の体の状態を自分で感じる習慣をつけるしかないと思った。
個人的な話:独居老人亡き後の後片付け
この本を読むと身につまされる。
なぜなら、我が家とは無関係の話ではないからだ。
ここ数年、私は親類宅の後片付けに追われていた。
ただ、親類は体を悪くしてから老人ホームで暮らしていたので孤独死ではなかった。
最初は父が親類宅の後片付けをしていた。
けれども、その途中で父が亡くなったので、
私が後片付けを引き継いだのだ。
結果、親類宅に加えて父の物品の後片付けもすることになった。
覚悟してはいたものの、
この後片付けが大変だった。
この後片付けの経験から、
自分は後の世代に迷惑をかけたくないと強く思った。
今後は物は買わない・増やさないと私は心に決めた。
我が家にはほかにも独居老人の親類がいる。
それも一人ではない。
だから、いずれまた後片付けに追われるのを覚悟している。
私の後半生はまるで後片付けのためにあるようだ。
私と同じような人が今後増えて、
独居老人の後片付け問題が今後表面化するだろう。
高齢者の見送りサービス
また、この本では高齢者見送りサービスが紹介されていた。
高齢者見送りサービスというのは、
子どもが業者にお金を払って高齢者の身の回りの世話を業者が代行したり、
葬儀や火葬の取次ぎを業者がするサービスのことだ。
今後はこういったサービスがますます必要とされるだろう。
私自身が親類宅の後片付けを体験してみた実感として、
世話をする高齢者がひとりだけならばなんとか頑張って面倒をみることができる。
けれども、今後、少子高齢化が進んで、
今まで同様、
親族が高齢者の世話をしなければならない場合、
世話が必要な高齢者がひとつの家庭に2人3人いるのは当たり前になるかもしれない。
世話が必要な高齢者が一家庭に2人3人となってくると、
働き盛りの世代がその全員に対応するのはかなり厳しい。
おそらく、
業者による高齢者見送りサービスを利用する人は今後どんどん増えるだろう。
今後が気になり始めるのは70代後半から80代前半
この本には、
高齢者が健康不安を感じて今後のことを案じ始めるのが78~82歳頃
だとこの本には書かれている。
これを読んで私の母は納得していた。
私も同感だ。
私の周りの高齢者もそうで、
母親だけでなく親類の女性達は判で押したように、
皆この年代になると今後のことを気にし始める。
そして、遺言書を作成したり、
自分が今後体調を崩したときは子どもや甥姪に頼り始める。
ただ、男性は80歳近くまで元気な人のほうが少ないから、
78~82歳頃に今後を案じ始めるのは女性と元気な男性に限った話かもしれない。
以降、
(書評)家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。(後編)墓じまい・葬儀について
に続く。
家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに(まとめ)
(書評)家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。(前編)高齢者見送りサービスと孤独死について
(書評)家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。(後編)墓じまい・葬儀について