読書感想「薬物依存症」著者:清原和博

読書感想

★登場人物は敬称略

この本は、言わずと知れた元プロ野球選手、清原和博の自伝である。

自伝といっても、
清原和博が薬物依存症になった頃から、
今まさに薬物依存症と闘っている状況について述べた本だ。

清原和博といえば、
西武→巨人で活躍した元プロ野球選手で、
プロ野球ファンならば知らない人は誰もいないくらい有名な選手である。

その清原和博が覚せい剤所持で逮捕されたのは、記憶に新しい。

この本は、重度の薬物中毒になり逮捕を経験し、
今も覚せい剤中毒の後遺症ともいえる、うつ病に苦しんでいる清原和博の
現状を記した本だ。

この本には、タイトルの通り、
・「薬物依存症」というのはどういうものなのか、
・「薬物依存症」はどういう状況で起こりやすいのか、
・「薬物依存症」の後遺症とはどういうものなのか、
が書かれている。

この本を読むと、薬物依存症の恐ろしさが良く分かる。

この本は、清原和博による語り下ろし(清原和博が語った内容を編集者がまとめた本)なので、
平易な言葉で書かれていて読みやすい。

実は、清原和博がこのような本を出版していたことを最近知った。

この本があまり話題にならなかったのは、
多くの野球ファンが見たいのは、野球で活躍する清原和博であって、
薬物依存に苦しむ清原和博には興味がないからだろうか。

確かにこの手の本は、自分が薬物依存の当事者にならないと手に取る可能性は低いものだ。

だからこそ、清原和博というスーパースターがこの本を出版した意義は大きいと思う。

清原和博のケースは覚せい剤中毒だったが、
覚せい剤まで行かなくても、睡眠薬やアルコールなどの薬物依存症になる有名人は、
あとを絶たない。

野球ファンのみならず、
中学生・高校生などの若い世代を含めた、
広く一般に読んでもらいたい本だ。

 

重度の覚せい剤中毒

清原和博の場合、致死量を超える覚せい剤を摂取していたそうで、
一度死にかけて電気ショックで息を吹き返したという経験をしたそうだ。

覚せい剤の場合、
肉体的な依存よりも精神的な依存が大きいそうだ。

 

覚せい剤を止めた後はもっと壮絶

覚せい剤を使用すると、
神経に快感を与える物質が脳から分泌される。
脳がその快感を覚えてしまい、
覚せい剤を止められなくなるのだ。

覚せい剤中毒の後遺症として、
覚せい剤を止めた後に、
ひどいうつ状態に襲われる。

一般に、覚せい剤の中毒症状が重いほど、
後遺症としてのうつ病もひどくなるそうで、
重度の覚せい剤中毒だった清原は、
重度のうつ病に陥ってしまい、
今も毎日、うつ病の症状を抑えるために抗うつ薬を
飲んでいるそうだ。

 

スーパースターほど陥りやすい

この本に載っている清原和博の担当医の話が印象的だった。

清原和博のようにスーパースターとして華やかな舞台で注目を浴びるような活躍をした人というのは、通常では有り得ないほどの「躁」状態を経験している。

その「躁」状態を脳が忘れず、また同じような快感を得ようと、
薬物中毒にハマってしまう有名人が多いとのこと。

 

アルコールという「落とし穴」

清原和博の主治医は言う。「アルコールは合法ドラッグ」だと。

なぜなら、
薬物依存症の患者さんの中には、
薬物への欲求を逃れるためにアルコールに逃げてしまい、
気が緩んで薬物にまた手を出す人が多いからだ。

薬物依存症になると、
アルコールを楽しむことも許されなくなるということだ。

お酒を嗜むことを制限されるのは
人生の愉しみをひとつ無くすということ。
やはり薬物には決して手を出してはならない。

 

覚せい剤に手を出したきっかけ「酒場ですすめられる」

清原和博が覚せい剤に手を出したきっかけが、
野球選手を引退した後、
心にぽっかりと空いた穴を埋めるために、
酒場で勧められたときに覚せい剤を使ってしまったそうだ。

彼のような有名人はお金をたくさん持っているので、
標的になりやすいということがよくわかる。

 

将来は高校野球の監督

この本を読んでいて、
清原和博の息子さん達は人の気持ちが分かる、
とても良い子どもたちだということだ。

また、清原和博の将来の夢として、
高校野球の監督と、
薬物依存症に関わることの2つを挙げている。

彼に教わってみたいという高校生は多いのではないだろうか。

 

薬物依存症

著者:清原和博
初版:2020年
発行元:文藝春秋社

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