タイトル:新版 障害者の経済学
著者:中島隆信
出版年:2018年
出版社:東洋経済新報社
本書は、経済学者である中島隆信氏(以下「著者」とする)が、
経済学者の視点から障害者福祉制度を提言する本である。
新版 障害者の経済学 | 東洋経済STORE (toyokeizai.net)
今回は((書評)新版 障害者の経済学 (前編)障害児教育についての感想)の続きである。
今回は後編という形で、
本書の就労支援・障害者雇用に関する部分の感想を書く。
就労支援・障害者雇用の問題点
著者は下記サイトで就労支援・障害者雇用の問題点を指摘している。
下記サイトは本書の内容をベースにしたものなので、
興味がある方はまずは下記サイトを読むことをおすすめする。
下記サイトは本書から障碍者雇用の問題点について抜粋したものなので、
分かりやすく記載されていると思う。
補助金目的「障害者ビジネス」が横行する理由 制度設計の不備が招いた「官製不祥事」の実態
日本の「障害者雇用政策」は問題が多すぎる 法定雇用率を上昇させるだけでは不十分
障害者雇用はかなりの機能不全状態らしい
本書には就労支援施設の現状が淡々と書かれている。
具体的には以下の通りである。
・ほとんどの就労施設で障害者の賃金は補助金(つまり税金)に頼っている
・利用者が行った業務による収入のみで利用者の給与を賄っている施設はほとんどない。
・利用者が行った業務による収入だけで利用者の給与を賄うなんてことは施設の職員は到底無理だと思っている
・職員が利用者の代わりに業務を手伝うことで売上を確保している施設もある
・補助金目当てでA型施設が次々に新設され、A型施設が乱立するA型バブルが起きた
・A型は最低賃金が保証されるので、利用者にロクな仕事をさせず、利用者はテレビを見たりゲームをしたりして過ごしても利用者は賃金がもらえる施設もある
・営利法人であれば、補助金ビジネスを成立させるための抜け道がいくらでもある。
本書を読む限り、
我が国の障害者雇用(就労支援)は現状うまく機能していない
ことが分かる。
我が国の障害者雇用はかなりの機能不全状態だ。
こんな状態から、
どうやったら障害者雇用を軌道に乗せられるのだろうか。
本書で著者は、
「障害者雇用というのは本来、企業が本人の能力を最大限引き出し、
本業における戦力として活躍できるような働き方を提示すること」
だと述べている。
この点に私は同感だ。
けれども現状の就労支援は理想から程遠い。
本書を読んで、
中学生の親としては就労支援の現場がこんな感じでは就労支援には到底頼れない・頼らないほうがいいと思った。
なぜなら、
入所した就労支援施設でテレビを見てダラダラ過ごしてお金をもらう姿勢が身に着けば、
その後、安きに流れ、きちんと働かないようになってしまうからだ。