タイトル:新版 障害者の経済学
著者:中島隆信
出版年:2018年
出版社:東洋経済新報社
本書は経済学者である中島隆信氏(以下「著者」とする)が、
経済学者の視点から障害者福祉制度を提言する本である。
本書について私が印象に残ったのは2つ。
障害児教育と就労支援についてだ。
今回は、本書の障害者教育に関する部分について感想を述べる。
東京都の特別支援教育(就業技術科・職能開発科)について
著者は本書で、
東京都立特別支援学校の就業技術科・職能開発科について
「就労率100%を目標に掲げ、軽度の知的障害者のなかでも選りすぐりの生徒たちだけを集めて職業訓練を施すのは障害者という枠組みの中で公然と行われている差別だろう」
と厳しい見解を述べている。
これはまさにその通りだと思う。
東京都立特別支援学校の就業技術科・職能開発科でやっていることは、
あらかじめ潜在能力が高い人を集めることで就労率を高めているだけだ。
東大に合格しそうな生徒ばかりを集めて、
「東大合格〇〇人」と謳う進学塾と何ら変わりはない。
それに、こういった職業訓練は本来、
学校でやらずともハローワークでの職業訓練でも実施できると思う。
そして、著者が本書で述べている通り、
現状の企業による障害者雇用は、法律で定められた雇用率をクリアすることに優先順位がおかれており、必ずしも障害者の潜在能力を本業で活用しようという形になっているとは限らない。
だからこそ、就労支援について不満をこぼす人が後を絶たないのだろう。
私見だが…東京都立特別支援学校の就業技術科・職能開発科に子どもを入学させたいけれど、
現状の入学試験の試験内容のレベルが高すぎて入学が叶わないという保護者はたくさんいると思う。
就業率にこだわらずに就業技術科・職能開発科の門戸をもっと広げればよいのにと思う。
発達障害学生の就労支援は大学のすべき配慮なのか
また、発達障害を持つ大学生が就職活動の企業面接に通らず、
就職もままならない場合が多いことが本書で取り上げられている。
著者は本書にて、
発達障害を持つ学生が一般採用での企業面接に通らないから、そこを何とか克服させるとか、障害の存在を認めさせ、特別枠での採用を奨励するといった支援は大学のすべき配慮とは思えない
と述べている。
この点についても同感だ。
本書によれば、
近年、発達障害の生徒たちが学習上の困難さを抱えたまま普通校へ通い、
AO入試などを経て大学に進学したものの、
就職活動でつまづくという傾向がみられるそうだ。
進路選択の上でとりあえず合格した大学に押し込めばよいという考えは持たないほうが良いと、
保護者である自分も肝に銘じなければならないと思った。
そもそも大学というのはあくまでも本人の勉強したいことを勉強しに行く場所であって、
就職予備校ではない。
とりあえず大学にねじ込むという選択はしないほうがいいだろう。
コロナ禍の効用
コロナ禍で大学はどこもオンライン授業になっている。
授業を何度も繰り返してみたり、
画像を止めてメモをとったりすることができる点で動画は有用だ。
発達障害をもつ学生の「ノートが取れない・授業が理解できない」等の問題は、
動画授業の利用で解消できる。
動画授業の普及が進んだことで、
発達障害をもつ学生が授業内容を理解しやすいようになったことは、
コロナ禍による効用かもしれない。
以降、
(書評)新版 障害者の経済学 (後編)就労支援・障害者雇用についての感想に続く。
