読書感想「検証 迷走する英語入試、スピーキング導入と民間委託」

書名: 検証 迷走する英語入試、スピーキング導入と民間委託
編者: 南風原朝和
出版年:2018年
出版社:岩波書店

ひとこと

本書には、どのような経緯で大学入試での英語試験の民間委託が決まったのかが詳細に書かれている。

本書は5人の専門家(都立高校校長、英米文学者、応用言語学者、センター試験の要職についていたひと等)の共著である。

異なる立場からの英語試験の民間委託に関する意見を知ることができる。

「新しい英語試験では試験の公平性が担保できない」という意見は5人の専門家の間で共通している。

本書と「史上最悪の英語政策」とを合わせて読むと、大学入試での英語試験の民間委託の概要や経緯についておおよそ理解できる。

 

本書で興味深かった点

・受験生は、数多くの民間英語試験の中から自分に合った民間英語試験を選択することができるが、民間英語試験はそれぞれ試験の内容や目的がばらばらで、公平性が担保できない。

・民間英語試験は、お金をかけて何度も受験すれば合格しやすくなる。つまり、資金力がある家庭ほど合格しやすくなる。また、試験会場も都市部に偏っているから、地方在住者は不利だ。

・大学入試改革で試験制度を変えるよりもまず、英語試験を民間業者に委託することがいきなり決定してしまったという不可解な経緯がある。試験制度開始までの検討があまりにも不十分だ。

・本書の共著者のひとりであるセンター試験の担当者によると、リスニング試験をセンター試験に組み込むのに20年かかったそうだ。

リスニング試験の導入に時間がかかったのは、音響の問題をクリアできなかったことが原因だそうだ。廉価なICレコーダーが市販されてようやくリスニング試験を実施できるようになったとのこと。

それでも、ICレコーダーの不良品をゼロにするのは不可能らしい。
それゆえセンター試験では、ICレコーダーの不良品が出たときの対策をかなり念入りに行っているそうだ。

リスニング試験の導入にこんなに時間がかかったのに、スピーキング試験の導入をこんなにずさんに行って、きちんとしたスピーキング試験が実施できるのだろうか?

 

個人的な感想

・公平性という観点からいうと、民間英語試験よりも今までのセンター試験の英語のほうが格段に良い

高校卒業時の英語運用能力を測るのならば、今までのセンター試験で十分。

・スピーキング試験をできるだけ早期に導入したかったのなら、なぜ「今までのセンター試験+スピーキング試験」にしなかったのだろうか?

・そもそも、スピーキング試験導入の要請は産業界からのようだが、大学入試は大学で学業を修めるために求められる資質を問うものであり、スピーキング力がなくても大学での勉強にはなんら支障はないのでは?

・スピーキング力を求めるならば、大学に入ってからスピーキングの勉強をやれば足りる

・我が家は民間委託試験に振り回されたくないので、オーソドックスな方法で勉強することを子どもに勧めるつもりだ。

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