読書感想「新・男子校という選択」

中学受験を考えている男の子の親ならば読んでおくと良い本。

この本は、2011年初版の「男子校という選択」の新版である。

実は初版「男子校という選択」は以前読んだことがあった。

でも、そのときはあまりピンと来なかった。

けれども、今回長男が公立中学に入学した後で改めてこの本「新・男子校という選択」を読んでみて、この本に書かれていることは「その通り!」「なるほど!」と思うことが多かったので、書評にまとめてみた。

 

掲載されている男子校

この本には、代表的な中高一貫男子校の特徴が各数ページずつ書かれている。

この本に掲載されている男子校は以下の通り。

・東京都…筑駒・開成・麻布・武蔵・海城・成城・駒場東邦・桐朋・暁星・巣鴨・本郷・
城北・芝・世田谷学園・東京都市大付属・佼成学園・聖学院・高輪・攻玉社・獨協・京華・日本学園・早大学院

・神奈川…栄光学園・聖光学園・浅野・鎌倉学園・逗子開成・慶應義塾

・埼玉…浦和高校

・大阪…大阪星光

・兵庫…灘・甲陽

・奈良…東大寺学園

・広島…修道・広島学院

・鹿児島…ラ・サール

上記の男子校の大半は完全中高一貫校である。

よって、上記の男子校のうち高校受験で入学できるのは、首都圏では、筑駒・開成・桐朋・城北・佼成学園・京華・日本学園と、大学付属校の早大学院・慶應義塾くらいである。

首都圏に関しては、早稲田・慶応志木・立教池袋・立教新座・学習院・城北埼玉・川越東以外の上位男子校はこの本にほぼ網羅されている。

受験する中学・高校を選ぶ際の参考になる本だ。

 

男子校の数

この本によれば、2018年度の全国の男子校(私立)はたった92校

国公立と私立と合わせると107校

男子校出身者は今や希少価値・絶滅危惧種だ。

自分でも調べてみたところ、東京都には男子校が34校ある。

つまり全国の男子校の約3分の1が東京都に集中しているということだ。

 

「男子校の良さ」とは何か

難関大学合格者は男子校出身者が多いというのは良く知られた話だ。

毎年、東大合格者ランキングのベスト10のうち7校か8校は男子校である。

ただ、この本を読んでみて、男子校の良いところは受験の優位性だけではないと思った。

 

男子校の良さ「突き抜けた存在を認めてくれること」

この本を読んでみてわたしが男子校の良さを実感したのは、男子校特有の「突き抜けた存在を認めてくれる」点だ。

女子は、真似できない得意なこと(この本では「過剰なこと」と表記されている)があることよりも、話し合いによって決められる=公平であること・他人と共感し合うことが大切だ

そんな女子とは対照的に、過剰なところがある人物・はみ出した人物は、男子には「面白い奴」として好まれる。

この本の中で武蔵高校の先生がおっしゃっているように、現在は「男女で能力が重なっている部分は大きいから、能力が重なっている部分=性差がないとみなして教育する」のが主流だ。

でも、重なっている部分からはみ出した部分=個性ともいえる。

男子校は共学校に比べると、個性の部分を伸ばそうとする教育を行っていると感じた。

以前、女子校化する学校:内申点にも書いた通り、公立中学(共学校)では女子が居る分、教育内容が女子向きになってしまい、男子(男子っぽい行動をとる女子も含まれる)の良さがあまり評価されないと感じている。

 

女子校化する共学校

共学校のなかでも特に、今の公立中学は学校によって程度の差はあるにせよ、

・先生と上手にコミュニケーションをとる

・授業中、積極的に発言する

・提出物を期限までに提出する

・副教材は指定されたページを全部埋める

・副教材で分からなかった箇所は赤できちんと修正する

ことが求められる。

その結果、決まりを守り、コミュニケーション能力が高く、コツコツ勉強できる女子のほうが、男子よりも高評価になる

裏を返せば、

・提出物を期限までに提出しない

・副教材(教科書ワーク)をすべてやらず、虫食いの状態で提出する

・赤で丸を付けずに提出する

などをしがちな男子生徒は自ずと評価が下がるのが今の公立中学の仕組みである。

正直言うと、期限までに提出物を出す習慣は将来仕事をするときに役に立つと思うけども、副教材をすべてやる必要なんかないし、キレイに丸付けなどやる必要もないと思う。

でも今の公立中学ではとにかく「きちんとしている生徒」が高評価なのだ。

公立中学ではどちらかというと、というより、明らかに女子に有利な評価体系である。

だからこそ、女子のほうが総じて内申点が高いのだろう。

もちろん、きちんとした男子もいるのは確かだ。けれども、きちんとしていても、教師に対して積極的にアピールできない生徒は高評価をもらえない。

男子生徒に多い「ひとつのことに突き抜けること」「突飛な発想・考え方・行動をすること」
「くだらないことを追求すること」は今の共学校(特に公立中学)では評価されない。

ひとつのことに突き抜けていること・突飛な発想や考え方、行動をすること・くだらないことを追求することは、女子目線からすると「バッカじゃないの」ということばかりだ。

でも、思い切りバカなことができる男子校は貴重だ。

一見バカだと思われることから新しい発想が生まれてくる。

当たり前だと思っていたことが、実は当たり前ではないことは、往々にして良くあることだ。

わが家の長男は成績が悪かったので、残念ながら中学受験は考えられなかった。

もし長男が中くらいの成績だったならば、公立中学を回避して中学受験して男子校に入学したほうが良かったのだろう。

そう思うほど、今の公立中学の生活は男子っぽい男子にストレスフルだ。

 

男子校の良さ「教師との出会い・面倒見の良さ」

この本には、男子校で良かったという男子校出身者のエピソードが掲載されている。

そのなかでも、おもちゃ博物館の北原照久氏(本郷高校出身)の話が印象的だった。

北原照久氏は出来の良いきょうだいたちと比較されるのが嫌で、小・中とあまり勉強しないまま本郷高校に入学したそうだ。

しかし、本郷高校で先生に褒められたことがきっかけでやる気が芽生え、中学校でまったく勉強しなかった分の遅れを教科書を丸暗記するなどして取り戻し、高校卒業時には総代だったそうだ。

私学の先生は異動がないからひとつの学校に長く勤められるし、その私学のOBであることも多い。

公立高校のようにすぐに先生が異動せず、高校3年間ずっと同じ先生に目をかけてもらったからこそ、北原氏は勉強を頑張って続けて、総代として卒業できるまでになったのだと思う。

もし公立高校に進学していたならば、北原氏は先生から目をかけてもらうことはなかっただろう。

このような教師との出会い・面倒見の良さそして温かさが私学の男子校の良さだと思う。

 

新・男子校という選択

著者:おおたとしまさ
初版:2019年
発行所:日本経済新聞出版社

 

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