志水宏吉「二極化する学校」(以下「本書」と表記する)を読む。
正直言うと、本書からは片手落ち感は否めない。
まず、特別支援教育について本書では触れられていない。
本書では特別支援教育に関する言及をあえて避けている感もある。
でも学力下位層を論じるならば、特別支援教育の話は避けて通れないはずだ。
関西在住者には参考になる本だと思う
著者が大阪大学大学院教授であるせいか、本書で取り上げられている例は、大阪などの関西の学校が多い。一部、東京都品川区の学校選択制の例も取り上げられてはいる。
中学受験やお受験の話も本書で取り上げられているが、深く掘り下げられた話ではないのが残念。
ただ私立中学校に通う割合(2019年)が掲載されていて参考になったので本書から抜粋する。
私立中学校に通う割合(2019年)
1位:東京都(25.0%)
2位:高知県(18.1%)
3位:京都府(13.4%)
4位:奈良県(12.6%)
5位:神奈川県(11.1%)
6位:広島県(9.9%)
7位:大阪府(9.5%)
8位:和歌山県(9.3%)
9位:兵庫県(8.5%)
10位:宮崎県(6.3%)
出典:二極化する学校(志水宏吉)
このランキングを見ると、東京都で私立中学校に通う割合が突出して高いことがわかる。
東京都では4人に1人が私立中学校に進学しているのだ(2019年)。
東京都では公教育への中学受験の影響は避けて通れないと思う。
中学受験のための通塾による公立小での授業内容や学校生活への影響・国私立中学への進学者が抜けた残りの生徒で構成される公立中での授業内容への影響などについて突っ込んだ話が知りたかった。
学力下位層の基礎学力定着
また、格差是正に公立校が向き合うべく、学力下位層の学力向上に取り組む学校の例が本書で紹介されている。
けれども、長男が実際に通った公立小・今通っている公立中を見ていると、公立校が果たして学力下位層の基礎学力の定着に取り組んでいる(いた)かというと、すごく疑問だ。
易しい宿題・難しい宿題というふうに、二極化した学力に合わせて2パターンの宿題を選べるようにするだけでも違うのに、と思う。でも公立校側はそのような発想には至らないようだ。
長男が通った公立校からは、学力下位層向けの特別の宿題など一度も出たことがない。
体裁を整えるかのように、補習授業は開催される。
でも1回当たりの補習時間が異様に短い。
20分30分の集団授業形式の補習で学力がつくのだろうか。
長男も一応、補習には参加している。
でも成果はまったく期待していない。
結局は塾頼みの現状
結局、中学受験するような学力上位層のみならず、学力下位層も塾に頼っているのが現状だ。
学力をつけるためには良い授業だけではダメだ。
学習内容を家庭学習で定着させる必要がある。
けれども塾とは違い、公立校は「家庭学習」の達成度をチェックするだけ。
家庭学習に関するきめ細かなアドバイスを学校(公立校)からもらったことなど一度もない。
だからわたしは公立校には期待していない。
保護者との円滑な協力体制がとれるのは結局、学校ではなく塾
本書にも、大阪・西成区のしんどい子たち向けの個人塾の話が載っている。
結局、こういった塾が学力下位層の基礎学力定着を担っているのが現状なのだろう。
二極化する学校 公立校の「格差」に向き合う
著者:志水宏吉
出版年:2021年
出版社:亜紀書房