タイトル:「心の専門家」はいらない
著者:小沢牧子
出版年:2002年
出版社:洋泉社
20年近く前にカウンセリングの危険性について指摘した書
本書の著者は、
ミュージシャン小澤健二(オザケン)の実母である小沢牧子氏である。
指揮者である小澤征爾は著者の義弟にあたる。
著者は、
カウンセリングやセラピーの問題点を90年代から一貫して指摘してきた。
私が本書に興味をもったのは、
長男が通う公立中学でスクールカウンセラーという職種の人が
学校現場に深く入り込んでいるのを目の当たりにしたからだ。
私が中学生だった頃には学校に居なかった「スクールカウンセラー」という職種の人が、
今は学校現場に居る。
カウンセリングを利用しているのは一部の生徒なのに、
なぜスクールカウンセラーは学校現場に存在し続けるのだろうかと疑問に思った。
スクールカウンセラーとの全員面接で書いたように、
東京都教育委員会は、
小5中1高1の子どもたちをスクールカウンセラーと相談させる機会をもたせている。
著者が本書を出版してからもうすぐ20年になる今では、
スクールカウンセラーとの全員面接のような、
子どもに対して半強制的な面談(カウンセリング)が、
学校現場に導入されている。
そもそも「専門家」とよばれる人にカウンセリングを受けなければならないという風潮に、
私は違和感がある。
本書で著書は、
スクールカウンセラーが学校現場に配置されることで、
いじめや不登校などを生徒の「問題行動」と位置づけ、
カウンセリングによって問題の原因が生徒側にあるように話をもっていく「柔らかな管理の危険性」を指摘している。
私がスクールカウンセラーに対する違和感はまさに、
スクールカウンセリングによる「柔らかな管理の危険性」に依るのかもしれない。
学校現場にスクールカウンセラーが導入された経緯
本書によれば、
スクールカウンセラー事業が学校に導入されたのは1995年度である。
スクールカウンセラー事業は実に25年以上の歴史がある。
学校現場にスクールカウンセラーが導入された経緯が本書にはかかれている。
スクールカウンセラー事業と心の教室事業
今の学校現場には、
スクールカウンセラーと心の教室の2つが導入されている。
どちらも、業務を担当するのは主に臨床心理士である。
本書によれば、
スクールカウンセラー事業・心の教室事業はそれぞれ、
臨床心理士の異なる派閥によって学校現場に導入されたもので、
スクールカウンセラー事業が始まって3年後に「心の教室」事業が始まったそうだ。
具体的にいうと、
スクールカウンセラー=臨床心理士の資格取得要件を厳格化し、専門性を高めることで業務を独占しようとする派閥により導入されたもので、
心の教室=カウンセリングと世間との垣根を低くして、誰もが気軽に相談できるようにしようとする派閥により導入されたもの、らしい。
ちなみに、スクールカウンセラー導入派だったのが河合隼雄である。
素人から見て、
スクールカウンセラー・心の教室相談員と名称はそれぞれ違えども、
似たようなことをする人がなぜ学校に2人もいるのか、
不思議だった。
本書を読んで、
臨床心理士といっても色々な考えの人がいて、
異なる考えを持つ人たちによる派閥の力で、
スクールカウンセラーと心の教室がそれぞれ導入されたという、
変わった経緯があったのだと分かった。
カウンセリング以外の業務
本書が出版されてから20年近くたった今、
スクールカウンセラーは、
たとえば子どもを精神科に繋ぐよう学校側が保護者に働きかけたい場合に保護者と面談する等、
カウンセリングを超える業務を学校現場で担っている。
本書が出版されてから20年近く経つ現在、
スクールカウンセラーが精神科への橋渡しを役割を担っている今の学校現場について、
著者はどう思っているのだろう。