著者: 阿部公彦
出版年:2017年
出版社:ひつじ書房
ひとこと
本書は、大学入試で導入が予定されている「スピーキングテストを含む民間英語試験」の問題点を詳しく述べている。
一般向けを意識したのか、説明が分かりやすく読みやすい本だと思う。
本書で興味深かった点
著者は、新たに始まる大学入試英語の試験制度が問題だらけで、英語力向上よりむしろ英語力の低下を招くことは必須だと本書で訴えている。
著者の意見として興味深かった点
・読み書き(文法)が一番重要。
・スピーキング試験は採点も不明確になりがち。
・各種民間英語試験(TOEIC,英検等)はレベルもターゲットもそれぞれ全く異なるため、共通のものさしで点数を比較することができない。
・文科省は20年以上前からスピーキング重視の方針を打ち出している。センター試験の問題に会話文が多いのもその影響である。
・学校の授業でスピーキングの練習に時間をとられると、読み書きに当てられる時間・文法を習得する時間がますます減る。
・下村元文部科学大臣は塾業界からの献金をたくさんもらっていたらしい。
本書を読んだ感想
どうやら、スピーキングテストを含む英語試験の民間委託は深い検討もないまま急に決まった話のようである。
英語試験に関する大学入試改革は十分な検討も真剣な議論もなされないまま進んでしまったようだ。
今後、民間英語試験に合格するための対策講座がいろいろな塾で開講しそうだ。そうなると、民間英語試験の受験準備にかかる費用はバカにならない。
保護者の教育費負担はますます重くなる。
けれども大学受験の受験機関に加えて、試験準備のための多額の費用を払うほどのゆとりがない人は多い。
幼保無償化は「焼け石に水」
それにしても幼保無償化なんて「焼け石に水」だ。
幼保無償化しても、中学生高校生になって英語学習にお金がかかるののなら意味がない。
それにしても、保育園から大学まで、金儲けのために公教育が削り取られて民間業者が入り込む構図、なんとかならないのだろうか。
2021.10.21追記
2021年6月時点で、文部科学省は、2025年の大学入学共通テストにおける英語民間試験の活用と記述式問題の導入について「実現は困難」とする提案を示している。