読書感想「発想の航跡 別巻 発達障害をめぐって」

書名: 発想の航跡 別巻 発達障害をめぐって
著者: 神田橋條治
出版年:2018年
出版社:岩崎学術出版社

 

ひとこと

本書は、神田橋先生の著書「発想の航跡」から発達障害に関する部分を抜粋し、当事者とその家族向けにまとめた本である。

神田橋先生の名言が本書のあちこちに散りばめられている。

 

本書の内容

本書は大別すると、
(1)神田橋先生が現時点で行っている発達障害の診察について(書き下ろし)、
(2)神田橋先生と別の精神科医との対談、
(3)神田橋先生を交えた研修会での発言、
(4)発達障害に関する本についての神田橋先生の書評、
で構成されている。

主に(1)~(3)を中心に構成されているので、ごった混ぜ感がある

本書は何かの知識を得るために読む本というより、神田橋先生の名言を味わうための本といえる。

是非、直接手に取って読んで欲しい。

 

神田橋先生の言葉

本書のごったまぜ感のせいか、感想を書くのが難しいので、本書で気になった神田橋先生の言葉を抜粋する。

両親も哲学に相性がある人と宗教に相性がある人がある。それを考えておくこと。セラピストや援助者も、自分はどちらの要素が大きい人かと内省してみておくといい(本書22頁)

(私見)
これはすごく理解できる言葉だ。

発達障害に限らず、通常の人間関係でも「この人は哲学と宗教のどちらに相性がある人なのか?」を考えるようにすると接し方が分かる。

 

男性は複雑系を理論化して因果律で説明できると考えるの。これは知性の道具としての方法なんだけど、道具が主人になってしまうと、頭でっかちでどうしょうもない人になる 。男性の知性のクセをゆるめるには、複雑系に触れるしかない(本書23頁) 

(私見)
これもすごく理解できる言葉。理系男子に多い頭でっかち系。頭でっかちを防ぐには、農作業・釣り・登山等で自然と触れ合うのが良いようだ。

 

どろんこ遊び体験みたいなものでないと発達できないトレーニングレベルがあってという論が必要(本書60頁)

(私見)
どろんこ遊び・水遊びみたいな原始的な遊びがとても大切だと意見に賛成!

 

今、学校のなかに塾が入ってきたりするでしょう、あれはすごくいい傾向ですよね。だんぜん塾の先生のほうがうつ病親和者が多い。情緒的なかかわりを希求する資質の人が多い(本書62頁)
(私見)
これも実体験としてよく分かる。学校の先生は組織人だけれど塾の先生はアウトローだから、発達障害者との親和性が良いと思う。

 

文字を覚える少し前、あるいは文字を覚えたての頃に見た風景、というのが一番癒しになるということ。これは、発達障害者に限らずすべての人に言える。文字を覚えて概念が見に付くと、もう、まともに外界を見ていない(本書92頁)

(私見)
哲学者のルドルフ・シュタイナーも同じことを言っている。本当にそうかもしれない。だから、幼稚園で好きだったことを仕事につなげると良いと神田橋先生は言うのだろう。

 

邪気

本書に記載されているように、神田橋先生は発達障害者に脳の<邪気>が見えるそうだ。

訓練で<邪気>が見えるようになるといいのにと思う。こういうところが神田橋先生が

神田橋先生のように<気功>をやってみようとか思う精神科医は少ないのだろうか?

「神田橋先生は特別だから」と多くの精神科医は言うそうだ。

でも精神科医は数多くの患者を診ているのだから、<邪気>と称するものでなくても「発達障害者はなんとなくこんな感じだ」と直観で分かりそうだと素人目には映るのだが、どうなのだろう。

 

トレーニング

本書には、神田橋先生が考案した<進化の体操><指いい子>のやり方が図解入りで掲載されているので、詳しいやり方を知りたい人は本書を読んで欲しい。

 

書評

本書の最後のほうの章に、神田橋先生による、発達障害に関する本についての書評がまとめて掲載されている。

この書評とは別に、本書中にもいくつか、神田橋先生が取り上げている本がいくつかある。その中で気になったのが「心からのごめんなさいへ(中央法規出版)」「人間脳の根っこを育てる(花風社)」。両方とも、いずれ書評としてここで取り上げる予定だ。

「心からのごめんなさいへ」は宇治少年院での取り組みを取り上げた本だ。

少年院に来る少年たちは発達障害のような子が多く、「回れ右」「前へ習え」「休め」ができないことが多いらしい。

宇治少年院では「回れ右」等ができるようにすることから始め、相手の行動を模倣できるようになると、相手の気持ちが理解できるようになっていくそうである。

なんとも興味深い話だ。

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