読書感想「子どもの英語にどう向き合うか」

書名: 子どもの英語にどう向き合うか
著者: 鳥飼玖美子
出版年:2018年
出版社:NHK出版

 

おすすめする点

本書は早期英語教育をただ礼賛する本ではない。

「英語を習わせるかどうか迷っている」
「幼稚園や保育園で習う英語のレベルに疑問を持っている」

そんな就学前のお子さんや小学生のお子さんがいる方におすすめの本だ。

本書でその旨を著者が述べている。

本書には、英語教育史から見た子どもと英語の関係2020年度に始まる小学校での英語教育についての著者の見解が書かれている。

 

本書で興味深かった点

本書の著者である鳥飼玖美子氏は、同時通訳の第一人者である。

著者は中途半端な早期英語教育に対して懐疑的だ。

 

著者の意見として興味深かった点

読み書き(文法)が一番重要

・英語が流暢に話せたとしても、高度で抽象的な話を英語できちんと説明できるかは別の問題

・日本語でも英語でも、高度で抽象的な思考を文章で表現するトレーニングを積まないと、高度で抽象的な話を説明することができないのだ。

・英語が上達するには結局、英語を学習するためのモチベーション(動機付け)が一番大事である。

 

感想

1.本書には発達心理学から見た英語教育について記載されている。発達心理学から英語教育を論じる本は他にあまり見当たらないなので、興味深かった。

 

2.英語教育とは直接関係がないことだが、

(1)幼稚園でも保育園でも、「自由保育」を受けた子どものほうが、「設定保育」を受けた子どもよりも語彙数が多かった。

(2)習い事の種類に関わらず、習い事をやっている子どものほうが、習い事をしていない子どもよりも語彙数が多かった。

という調査結果が本書で触れられている。

 

3.本書によれば、現在の英語教育の問題点として挙げられていることは、明治時代にもすでに生じていた問題とのことだ。

 

4.夏目漱石「どんな学問でも母国語で勉強できないことは屈辱」と言っていたそうだ。

日本で「日本語」を使って勉強できなくなることが一番困ることに、文法軽視・スピーキング推進派はどうして気づかないのだろうか?

 

5.「英語で授業をすれば、留学生が入学しやすくなるので定員を埋めることができて良い」という考えがあり、大学経営の側面から英語で授業をしようと思っているのだろうか?

 

おまけ:本書で見つけた、ちょっと嬉しい話

本書には著者の小さい頃の様子が記されている。

著者である鳥飼氏は、小さい頃は人見知りが強くてお母様を心配させたそうである。

加えて、鳥飼氏はおっとりしているお子さんだったそうで、低学年の徒競走でニコニコとしながらゆっくり走り、両親をガッカリさせたとのことだ。小学校高学年の時の担任に「鳥飼さんは向上心が足りない」と告げられたそうだ。

そんな著者も、英語に興味を持ち始めてからは一直線で、高校時代に自分で留学について文部科学省に問い合わせたり、一人で外国に留学したりと、「英語」という興味対象が見つかってからは、小さい頃とはうって変わって積極的になったようだ。

うちの長男も小学校低学年の頃は徒競走でのんびり走ったりと向上心がない感じなので、鳥飼氏に親近感を感じた(著者の鳥飼氏と同じだと言うと鳥飼氏に失礼になり申し訳ないのだが)。

そんな長男も鳥飼氏と同じように、高校生になったとき目覚めて一心不乱に打ち込めるもの(なんでもいいから)が将来何かあるといいなと思っている。

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