「ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う」を読んだ。
この本は日本の精神科医療の問題点について切り込む。
具体的に言うと、この本では医療保護入院・身体拘束・精神科移送・大規模無低・こどもの薬漬け…について取り上げられている。
もちろん、まっとうな精神科病院も存在しているだろう。
ただ、少なくとも一部の病院はまっとうではない、ということだ。
今回は、この本で取り上げられた内容のうちこどもの薬物依存についての感想を書く。
こどもの薬物依存を取り上げる本はまだまだ少ない点で、この本は貴重だ。
経済誌にも関わらずこの問題を追ってくれた東洋経済を評価したい。
この本に書いてある通り、今は、授業中にじっとしていられない子や対人トラブルを起こす子に対して保育園や学校の先生から服薬をすすめられるのが当たり前のようだ。
「周りに迷惑をかけたくない」という理由で服薬を決めた親がこの本に登場する。
『支援級の教師から「服薬していると穏やかになる」と言われると、服薬を止められない』とのこと。
薬に対する心理的な依存のせいで、こどもは学校を卒業してからも薬が手放せないそうだ。
こどもの薬漬けについて
教室でじっとしていられない・ほかのこどもとトラブルを起こす、という理由で学校から服薬をすすめられる。
学校側が服薬をすすめているってこと、教育関係の人は知っていると思うが、一般人はまだ知らない人が多いだろう。
「学校がこどもに服薬をすすめる」という現状をもっと多くの人に知ってほしい。
そろそろ「静かにしていないと成立しない」ような授業のやり方それ自体を変える時期に来ている。
そうしないと、学校は回っていかないだろう。
「教師が教壇から一方的に話し、それを黙って聞くこと」を子どもたちに求める今のやり方はどうみても、もう限界だ。
市販薬の過剰摂取について
そして、もうひとつ。
こどもの市販薬の過剰摂取について。
市販薬の過剰摂取の問題は少なくとも30年以上前から存在した。
私自身、それを実際に目撃している。
今問題になっているのは「市販薬を過剰摂取する人が低年齢化した」ということなのだ。
市販薬の過剰摂取の問題は長年、業界の人はみんな知っていたけれど放置していた。
ジャニーズ事務所の問題と同じだ。
昨今、若者による市販薬の過剰摂取だけでなく、大学生の違法薬物使用が問題化している。
アメリカでは「発達障害の治療薬が、違法薬物のゲートウェイ・ドラッグになっている」という意見も出ている。
学校が勧める服薬が、市販薬の過剰摂取や違法薬物使用の引き金になることを懸念する。
ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う
東洋経済新聞社
2022年3月