読書感想「ケーキの切れない非行少年たち」

読書感想

「ケーキの切れない非行少年たち」を今さらながら読んでみた。

この本はベストセラー本なので、2019年~2020年にかけて図書館で予約しても予約待ちであり、なかなか予約が回ってこなかったのだ。

 

「ケーキの切れない非行少年たち」を読んだ感想

著書の宮口幸治氏は、京都大学工学部を卒業して一般企業で働いたのち、神戸大学医学部に入学して医師になった方だ。宮口氏は現在、児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務されている(以上、裏表紙より抜粋)。

 

「クラスで下から5人」のこどもたち

この本によれば、
現在は、IQ70未満を知的障害と指定しているそうだ。

IQ70~84の人は境界知能といわれ、
現在は知的障害だと認定されていない。

IQ70~84の人は現状、
自分の認知機能に問題が有るとは思っていない人がほとんどだと思う。

IQ70~84の人は正規分布にしたがうと、人口の16%いる。
結構たくさんいるというか、たくさん居るのだ。

クラスの16%=1クラス30人でおおむね下から5人、ということだ。

この本のタイトルからすると、
非行少年について書いてあると思うだろうが、そうではない。

非行少年は、
クラスで下から5人の生徒たちと同じように、
一見、普通に見えるけれども、
認知機能に問題を抱えていることが多い。

この本「ケーキの切れない非行少年たち」で著者が言いたいのは、

「非行少年に限らず、
クラスで下から5人のひとたちは世の中に案外多く居る。
この人たちは、社会に出ても、ミスや忘れ物が多かったり、
指示を覚えられなかったりと、
上手く行かないことが多いから、支援が必要だ。」

ということだと思う。

 

朝の会でコグトレ

著者は、
学校の朝の会で1日5分コグトレ(認知トレーニング)をすることを
提案する。

コグトレとは、
点つなぎや図形探しなどに代表される、
ゲーム感覚で認知機能を高めるテストのことだ。

計算テストや漢字テストの場合、
できないと引け目に思うけれども、
コグトレならばゲーム感覚で楽しめるから良いと著者は語る。

 

コグトレの経験者としての感想

コグトレといっても、ピンと来ない人も多いだろう。

我が家の長男は小学生の頃、コグトレを受けていた(現在は受けていない)。

小学生であれば、コグトレをゲーム感覚で楽しめる点で、
コグトレは有効だと私は思う。

ただ、コグトレで認知機能が飛躍的に上がるケースばかりではない。

長男の場合、
コグトレをやったからといって、
不注意や不器用は完全には治らなかった。

けれども、
長男の視覚機能はコグトレによって改善したのは確かだし、
漢字が徐々に覚えられるようになったのも、
コグトレの成果が徐々に表れているせいかもしれない。

コグトレに過度の期待は禁物だが、
コグトレを継続すれば、それなりに成果が出ると思う。

約5人に1人が境界知能だという事実を鑑みると、
コグトレは特別支援学級だけでなく、
クラス全員でやるほうが効果が高いだろう。

 

5人に1人を要支援と認定していいのか

もうひとつ気になったのが、
「境界知能である16%の人たちを要支援と認定する社会が果たして良い社会なのか?」
ということだ。

職業や業務を選べば普通に働ける人たちを「要支援」と認定するのは気が引ける。

月並みだけれど、
「自分の苦手な分野を理解したうえで、自分ができるところで勝負するしかない」
ということだろうか。

 

ケーキの切れない非行少年たち

著者:宮口幸治
初版:2019年
発行元:新潮社

 

 

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