書名: 発達障害バブルの真相
著者: 米田 倫康
出版年:2018年
出版社:萬書房
ひとこと
本書は、発達障害の薬物療法を取り巻く日本の教育界の現状を知ることができる、2019年現在では数少ない本である。
本書の説明の大半を占める「発達障害バブルの現状」「発達障害に対する日本の医療・教育界の現状」・「ある医師と製薬業界とのつながり」については、詳しく書かれているので参考になると思う。
ただし、本書にはっきりと明記されているが、著者はある宗教団体(サイエントロジー)と関連があるそうだ。その点を踏まえて読んだほうがよいだろう。
ある宗教団体との結びつきを別にして、本書が日本の医療界・教育界の方向性に疑問を呈する数少ない本という点は評価できる。
感想
現在、多くの発達障害の子どもたちが薬物療法を受けている。
個人的な意見として…私は自分の子どもに薬物療法を受けさせたくはない。
けれども、各家庭がどの治療方法を選択するかは各家庭が決めることなので、薬物療法を選択するのは各家庭の自由だ。
とは言うものの、著者が本書で述べているように、就学前の子どもに薬物療法をすすめることには私も違和感があるし、早期発見・早期治療第一で教師や保育士が服薬・受診をすすめることについても私は違和感がある。
本書を読んで重要だと思った点
・うつ病バブルの次は発達障害バブル
うつ病バブルがひと段落して、次は発達障害でひと儲けしようとしている人たちがいる。
・文部科学省が作成した発達障害チェックリストのいい加減さ
チェックリストが、個性を障害と認定して手がかかる子どもを厄介払いする方便になっている。
・発達障害者施策に影響力がある市川宏伸医師が製薬企業から献金を受け取っていた点
市川医師は、当事者(発達障害者)団体の代表でもあったため、製薬企業からの献金受取は利益相反となる。
・受診や服薬を勧める教師たち
現在、教師や保育士は早期発見・早期治療第一だと教育されているため、善意で受診・服薬を勧める人が多い。
本書で一番共感できた箇所
「軽度の発達障害だったはずの子が、デタラメな投薬によって症状が悪化して強い薬を出されるようになり、病名も『双極性障害』や『統合失調症』などに変わり、一生薬を飲み続けるように言われる」(本書、169頁)
「子どもを安易に精神科につなげる教師は、つなげた先の精神科でいったい何が行われているか知らないだろうし、つなげられた精神科で被害に遭ったとしても、つなげた教師が責任を取ることなど絶対にない」(本書、174頁)
代替療法について
本書の最後のほうには食事の重要性に関する記載が少しだけあり「精神疾患には食事療法が有効」という説明がある。この考えは冒頭の宗教団体の教えに基づくものだろうか。
個人的には食事療法を完全に否定しないが、最近は食事療法だけでなく色々な代替療法が出てきているのだから、本書ではそれにも少し触れてほしかった。
実際、代替療法で高い効果を得るためには、食事療法だけでなく運動などその他の代替療法と合わせて複合的に行ったほうが良いと思うのだが、実際どうなのだろうか。