著者 :井原 裕
出版年:2018年
出版社:青春出版社
ひとこと
著者によれば、本書『「子どもの発達障害」に薬はいらない』は発達障害の親に向けて書いたという。
著者は本書で繰り返し述べるのは、まずは生活習慣を見直すことだ。
極めてシンプルで、ごく当たり前だけれども、とても大切なことだ。
実際の診療の場で、まずはじめに睡眠と運動について改善するよう指導する児童精神科医はどれくらいいるのだろうか。
薬物治療について
著者は「発達障害の子どもには薬は最小限にとどめるべき」との見解だ。
現状は、そのような考えを明言している精神科医は少ないと思う。
その意味で貴重な本だ。
(注)著者は薬物治療を否定していない。本書でも、著者は実際の診療で薬物治療を行っていると述べている。
睡眠と運動の重要性
本書によれば、こどもにとって
・睡眠(睡眠時間の確保)
・運動
が重要とのこと。
本書は発達障害に限った話になっている。でも、運動と睡眠が重要なのは発達障害だけでなく、他の精神疾患でも同じだろう。
そもそも「運動と睡眠が重要」なのは精神疾患に限らず、すべての病気に共通することだ。
生活習慣の確立の大切さ
不登校について著者は、学校に行かないことよりも、不登校で生活習慣が乱れること(昼夜逆転の生活・人と接する時間が少ない等)による影響が大きいと述べる。
確かにそうだ。
双極性障害ブーム?
本書によれば、日本でここ数年続いている「発達障害ブーム」は米国ではすでに終わった話であり、米国では「双極性障害(躁うつ病)ブーム」とのことだ。
日本でも、これからしばらくの間「発達障害ブーム」が続いた後に、今度は「双極性障害ブーム」が待っているのかと思うとうんざりする。
著者は本書で「日本は米国の二の舞になってほしくない」と訴えている。
私も本当にそう思う。