タイトル:末期がんでも元気に生きる
著者:石弘光
出版年:2017年
出版社:ブックマン社
今日は、以前の記事(すい臓がん)でも取り上げた、石弘光先生の著書「末期がんでも元気に生きる」について取り上げる。
本書には、一橋大学の学長でもあった石先生のすい臓がんの闘病生活の詳細が描かれている。
さすが学者の方らしく理路整然とした文章で書かれていてとても読みやすい。
そして、ガン患者だからという悲壮感は本書からはまったく感じられない。
がんと共存する
本書には「がんとの共存」を目指してというサブタイトルがついている。
このサブタイトルには石先生のがん治療に対する思いが示されている。
本書が出版されたときは石先生はご存命だった。
石先生は闘病の末、2018年8月にお亡くなりになった。
石先生はすい臓がんが発覚してから2年ほど闘病した末にお亡くなりになったのだ。
石先生はすい臓がん発覚時にステージIVであり、遠隔転移が認められた状態だった。
ステージIVということは、要するに、すい臓がん発覚時には手術ができない状態だった。このため、抗がん剤治療がメインの治療にならざるを得なかった。
石先生はもともと膵嚢胞をお持ちだった。このため、定期的な検査は欠かさず行っていた。
膵嚢胞が突然がん化してすい臓がんになったとのことだ。
本書の中で印象的だったのは、石先生は「やりたいことはやったので、もうこれ以上やりたいことはない」と述べていることだ。
なかなかそうは言い切れない。
石先生は、今まで80か国以上の国を訪問し、仕事面では国の制度に関わる色々な仕事をし、多くの教え子たちを育て、そして、家庭面では息子たちも独立してそれぞれ家庭を営み、お孫さんもいる。
石先生はとても充実した人生を送ってこられたように私には見える。
私ももし年を取ってからがんが発覚することがあれば(嬉しくないことだけれども)、「これ以上やりたいことはない」と言い切れるような生き方をしていきたい。
石先生は、80歳近くですい臓がんになって寝たきりで10年以上過ごすよりも、できるだけ長くQOLを保つほうが重要だと述べている。
私もこの考え方に深く共感する。
本書によれば、がんが発覚してから石先生は少しずつ終活の作業を進めていったとのことである。
がん発覚時にステージIVだったこともあり、がんの完治よりもがんとの共存を石先生は目指していた。
ステージIやIIの患者さんならまず、がんとの闘いを決意する。
でも石先生はがん発覚時にステージIVだったからこそ、がん発覚時に人生の幕引きを考える機会が十分あったのだろう。
やっぱりつらい抗がん剤治療
石先生のことを知ったのは、AERA.dotで連載されていた治さないのに、元気です! すい臓がんステージⅣ 石先生 というサイトだった。
このサイトを読むと、石先生は、ステージIVですい臓がんが発覚してから約2年間は、QOLをわりと維持した状態で過ごせたようだ。
そして、抗がん剤治療はがんとの闘いというよりも副作用との闘いであることが分かる。
石先生は抗がん剤に負けないよう、食事や運動などの体調管理を徹底して行っていた。
がん治療の効果を上げるため、そして心地良い生活を続けるために、石先生はQOLの維持を重要視していた。
軽視されがちなことらしいが、抗がん剤治療を成功させるには体力が重要だというのを石先生はよく理解されていた。
だからこそ、石先生は2年もの間、抗がん剤の副作用と戦いつつもQOLをある程度維持できたのだろう。
抗がん剤治療における体調管理の大切さがよく分かる。
がん患者としてできるだけ快適な生活を送るための努力を怠らなかった石先生は素晴らしい。