膵臓がん

知人がすい臓がんだと分かってから1年以上が過ぎた。

 

「すい臓がん」という病

今は一部のがんを除けば、早期発見すればがんは治癒できる病気である。

一部のがんを除き、がんは治癒できるようになってきている。

それでも、いまだ治癒が難しいといわれているがんのひとつが「すい臓がん」だ。

ここ数年でも、元プロ野球選手の星野仙一、昭和の大横綱である千代の富士、女優の八千草薫(いずれも敬称略)がすい臓がんで命を落としている。

最近、すい臓がんで亡くなる人のニュースをよく聞く。

他のがんの治療成績が上がっているせいだろうか、がんの死因の中ではすい臓がんの割合が増加しているそうである(がんの部位別統計/日本対がん協会)。

すい臓がんにかかっている当事者でもない・当事者の家族でもない私がすい臓がんについてあれこれコメントするのも正直、気が引ける。

けれども、知人がすい臓がんだと分かってから、すい臓がんについて色々と調べてみて、もし自分がすい臓がんを患ったならどういう選択をするだろうかと非常に考えさせられる。

どのような治療方法を選択するかはひとそれぞれなので、各人の選択が良い悪いと言いたくない。

けれども、自分の余命が限られたものだと分かったときにどういう選択をするのかは、今までの生き様を問われているような気がするのだ。

 

すい臓がんを患う知人が選んだこと

手術を受ける

すい臓がんを患っている私の知人は手術を選択した。

すい臓がんというのは早期発見が難しく、がんが発見されたときにすでに末期で手術ができない場合もあると聞く。

しかし、彼女のすい臓がんは発見当時ステージIIで、手術適応だった。

彼女はがん発見から比較的早期に手術を受けた。

彼女は、なんとしてもすい臓がんと闘って治したいという思いが強かったので手術を選択した。

ところが、術後、彼女のQOLは大きく低下してしまった。

彼女が受けた手術は「膵頭十二指腸切除」と呼ばれる手術だった。

この「膵頭十二指腸切除」という手術は、消化器系手術の中で非常に複雑なもののひとつであるようだ。

この手術で彼女は、胃の一部・すい臓の一部・胆のう・十二指腸を切除した。

膵臓の手術について 国立がん研究センター 東病院

術後、彼女は食欲がなくなり、一度にたくさんの量食べられない・特に脂っこいものが食べたくなくなった。

そのせいか、彼女の体重は手術前に比べて20kg以上減った。

 

再発

手術の後、彼女は補助療法(抗がん剤の投与)を受けた。

しかしながら、残念なことに、手術から約半年後、がんが再発した。

彼女は現在、がんと闘っている。

 

医者が受けたくない手術

私の知人が受けたすい臓がんの「膵頭十二指腸切除」という手術は、医者が「自分は受けたくない手術」のひとつとして挙げられている(名医たちが実名で明かす「私が患者なら受けたくない手術」)。

 

上記サイトによれば、「膵頭十二指腸切除」という手術は、がんが取り切れない・手術合併症の発生率が高い・QOLが大幅に低下するという問題があると医師が述べている。

実際、術後の彼女を見ていると、食事の楽しみがほぼなくなり、QOLが大きく低下している。

この手術自体を真っ向から否定するつもりはない。

いろいろなサイトを見ていると、この「膵頭十二指腸切除」という大手術を受けて、すい臓がんが治癒し、通常の食事をとれるほどに回復している人も実際いるからだ。

 

石弘光氏のがん闘病記

AERA.dotにて、石弘光先生のすい臓がん闘病記が公開されている。

石弘光先生は経済学者で、一橋大学・放送大学の学長をされた方である。

石先生のすい臓がん闘病記はすっきりとした文章で理路整然と書かれており、経済学者だった石先生らしい。

石先生のすい臓がん闘病記はとても読みやすいので一読をお勧めする。

がんの発見当時、石先生のすい臓がんはステージIVであり、手術が難しい状態だったため、石先生はすい臓がん治療として抗がん剤による投与を選択した。

石先生の闘病記を読むと、約2年の闘病生活のうち最後の3か月ほどはQOLが大幅に低下したようであるが、

それまではわりと普通に食事を楽しみ外出もされていて、がん患者とは思えないほどアクティブに行動されているのが分かる。

石先生と私の知人を比較すると、がんのステージは石先生(ステージIV)のほうが私の知人(ステージII)よりも進行していて、そのせいで石先生は手術が受けられなかった。

一方、私の知人はすい臓がんの切除手術を受けたけれども、がんがより進行していて手術を受けなかった石先生のほうが、手術を選択した私の知人よりも、健康的な生活を送っている期間がずっと長い。

もちろん、石先生の抗がん剤治療が上手くいったことが、石先生が長期間QOLが高い生活ができた理由だと思う。

けれど、私の知人が受けた「膵頭十二指腸切除」という手術が体に与えるダメージは無視できないほど大きかったのだと私は思う。

 

2019.11.26追記

石先生の著書「末期がんでも元気に生きる」には、抗がん剤投与前は食欲旺盛だった石先生が、抗がん剤投与によって食欲低下や吐き気などの副作用に苦しめられたという記載がある。

手術をせずに抗がん剤治療すると抗がん剤の副作用がなくなる訳ではないのだ。

 

重粒子線治療という選択

そんな中、上にも記載した、名医たちが実名で明かす「私が患者なら受けたくない手術」 というサイトに「すい臓がんにかかったら手術の代わりに重粒子線治療を選択する」という医師の発言があった。

 

重粒子線治療とは何だろう?

重粒子線治療ガイドというサイトがある。

重粒子線治療とは放射線治療の一種で、具体的に言うと、重粒子線治療とは、重粒子(炭素イオン)線を使った放射線治療である。

上記サイトによれば、重粒子線治療は先進医療として認められているので、一般の保険診療と併用が可能ではあるものの、重粒子線治療の自己負担費用は約300万円とのことだ。

先進医療ゆえに、治療費用はそれなりに高額だ。

今まで私は先進医療について興味はなかった。

けれども、今回すい臓がんについて色々と調べてみて、将来がんに万が一罹った場合に重粒子線治療を受けられるように、今加入している保険に先進医療特約を付けるか、または先進医療のみの保険に加入したほうが良いかもしれないと思った。

 

術前化学療法という選択

私の知人は選択しなかったようだけれども、すい臓がんの手術を行う「前」に抗がん剤による治療(術前化学療法)を受けるという方法もあるようだ。

膵臓がん治療に新手法…手術前の抗がん剤に効果

術前化学療法とは、手術の前に抗がん剤治療をすることで、がんを縮小させてからすい臓がんの手術をするという方法だ。

現在、手術の後に抗がん剤を投与する治療は多く行われている。

手術の前に抗がん剤を投与するので、体力があるうちに抗がん剤治療できるため、抗がん剤の効果が発揮されやすいとのことだ。

私の知人を見ていると、術後、あまり食べられなくなってしまい、体重がかなり減ってしまった。

手術後に化学療法(抗がん剤投与)を始める前に彼女の食欲はすでになくなってしまい、結果として、体力が落ちた状態で抗がん剤治療を行うことになった。

そんな彼女を見ていると、手術前(食事ができる元気なうち)に抗がん剤を投与したほうが良かったのではないかとも思える。

しかし、現状(2019年現在)、どこの病院でも術前化学療法を行っている訳ではないようだ。

そうなると、どの病院で治療を受けるかという選択はかなり重要だ。

 

最後に

自分がすい臓がんになったらどうするだろうか?

治療方法の選択はひとそれぞれだ。

私の知人も治療について自分の考えがあり、色々と調べたうえでの結論だろう。

自分ならば、重粒子線治療を受けたうえで、必要に応じて術前化学療法を選ぶ気がする。

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