タイトル:女帝 小池百合子
著者:石井妙子
出版年:2020年
出版社:株式会社文藝春秋
結局、何をしたいのか分からない人
話題の本「女帝 小池百合子」を読んだ。
この本は400ページを超えるボリュームである。
小池氏の生い立ち・中学高校時代・エジプトのカイロ大学の留学時代・ニュースキャスター時代・政界入り・希望の党結成・都知事選と、小池氏の今までの歩みを詳細に振り返っている。
本書には数多くの人にインタビューした記録が含まれている。
著者が本書を完成させるまで3年を費やした力作である。
著者の石井氏が緻密で膨大な取材をして本書を完成させたことは、本書を読めば明らかだ。
この本の内容の詳細は多くの人が書評を記しているので、詳しい説明は省く。
ここでは本書を読んで私が感じたことを中心に触れる。
本書で一番印象的だったのは、本書の後ろのほうに書かれている「本書を執筆した著者の率直な思い」の欄だ。
著者である石井氏は本書で、小池百合子という人が「東京都知事」という輝かしいポジションに就いている女性であるにも関わらず、そのポジションが偽りの経歴によってもたらされた可能性が高いことがとても残念だという旨の感想を述べている。
つまりは、著者の石井氏自身、3年もの年月をかけて小池百合子について取材を行ったにも関わらず、小池百合子に魅力的を感じなかったのだろう。
私もこの著者の感想におおむね同意する。
結局、今の日本で東京都知事という、女性のなかで最も高い地位に付いている女性が、嘘に嘘を重ねながらオヤジたちの間を泳いできた女性かと思うと、とても残念な気持ちだ。
なお、本書では、カイロで小池氏と同居していたという早川さん(仮名)が、小池氏はカイロ大学を卒業していないと証言している。
だが、早川さんの証言がなくても、物的証拠や小池氏のアラビア語運用能力から判断して、小池氏はカイロ大学を正規のルートで卒業していない可能性は高いだろう。
小池百合子という人はいったい何をしたいのだろうか。
小池氏が色々な人を利用して現在の地位に昇りつめた様子が本書には書かれている。
小池氏は「人を騙すこと」それ自体・「人を思いのまま操ること」それ自体に快感をおぼえるタイプには見えない。その点は少し救いがある。
そうすると、小池氏は単に「注目されることに異常に快感をおぼえるタイプ」なのだろうか。
そういうタイプの女性しか要職に就けないのが今の日本の現状だとは思いたくない。
けれども残念ながら、実際そうなのかもしれない。