令和2年度東京都立高等学校入学者選抜合格発表を見ていて、ふと思った。
男子合格者数が応募人員より減らされている高校が結構あるのだ。
本年度の都立高校入試で男子合格者数が減らされた高校は以下の通り。
参考までに、女子合格者数が減らされた高校をあわせて示す。
令和2年度都立高校高校入試合格発表
男子の合格人数が減らされた高校
募集人員 受検人員 合格人員
男子 女子 男子 女子 男子 女子
港区
三田 107 99 181 219 97 113
文京区
向丘 115 107 151 210 104 120
墨田区
日本橋 91 85 105 155 82 94
世田谷区
桜町 132 122 144 187 119 142
千歳丘 116 107 145 155 105 121
松原 82 76 107 141 74 88
渋谷区
広尾 81 74 134 151 73 84
中野区
鷺宮 115 107 157 189 104 121
武蔵丘 132 123 197 194 124 135
豊島区
豊島 115 107 189 206 105 119
文京 148 137 185 229 134 153
練馬区
井草 116 107 170 190 105 122
足立区
足立新田 108 100 111 122 98 110
淵江 88 83 89 95 80 91
江戸川区
小岩 148 137 241 225 138 150
青梅市
多摩 82 76 85 91 75 85
調布市
神代 115 107 163 198 104 122
小平市
小平 82 76 116 145 75 85
女子の合格人数が減らされた高校
品川区
大崎 116 107 195 131 127 98
練馬区
光丘 96 89 104 80 104 80
町田市
山崎 72 67 100 58 81 58
上記表から、女子合格者数が減らされた高校の数に比べて、男子合格者数が減らされた高校の数が圧倒的に多いことが分かる。
男子合格者数が減らされた都立高校は、女子人気が高いことで知られている高校ばかりである。
過去の都立高校の合格発表を調べてみると、数年前からすでに、女子人気が高い高校では男子合格者数が減らされていることがわかった。
なぜ男子の合格者数が減らされたかというと、東京都教育委員会は現在、男女別定員を緩和する措置をとっているからである。
上記の記事の内容からすると、一定の条件を満たす都立高校のみが男女別定員を緩和できるようである。
詳細はまだ調べていないけれども、入試結果から推測すると、男子定員の1割程度を減らしてその分を女子定員に回すことができるようである。
確かに、一部の都立高校では、女子のみに人気が高い高校というのが存在する。たとえば、鷺宮高校(中野区)・神代高校(調布市)・小平高校(小平市)である。
また、広尾高校(渋谷区)・文京高校(豊島区)・武蔵丘高校(中野区)のように、女子に人気が高いが、男子の人気もそこそこ高い高校もある。これらの高校では男子の受検倍率もそこそこ高いのに、女子の受検倍率が2倍前後と高いため、男子の合格者数が減らされている。
おそらく、これらの高校では女子の受験者層が男子の受験者層よりもかなり優秀なのだろう。
一部の都立高校の受験倍率が2倍前後なのは間違いなく、都立高校の定員が増えないことに原因がある。
都立高校の定員を増やさないせいで一部の都立高校で受験倍率が高くなっていることへの批判をかわすために、東京都は、男女別定員の緩和措置を導入して、女子人気が高い高校の女子の受検倍率を意図的に下げているようにみえる。
まとめ
女子の倍率が高い高校を受験する男子は、合格者数を減らされる覚悟をするべし
以上のことから、女子に人気が高い高校を受験する男子は、男子の合格者数が減らされる可能性がある点に留意しなければならない。
たとえ男子の受検倍率が低くても、女子の受検倍率が高いと男子の合格者数を減らされる可能性があるので、男子には不利だ。
内申もペーパーテストの出来も過去の合格者平均を大きく上回る状態で受験するならばよいけれども、内申が低くて当日の試験の出来頼みにすると、女子人気が高い高校を受験する男子は合格が厳しくなるだろう。
一般論として、男子は女子に比べて内申点が取りにくいといわれている。女子は通常、真面目に提出物を出したり、授業態度がきちんとしているからだ。
だから、ほとんどの高校で、女子合格者の平均内申は男子合格者の平均内申よりも高い。
男女別定員が緩和される前は、男子の内申点の低さは男女別定員によってある程度解消されただろう。男女別に定員が決まっていれば、男子は男子の中だけで競争すればよいからだ。
けれども、男女別定員が緩和されることで、女子の受検倍率が高い高校では、内申が低い男子は割りを食う可能性が大いにある。
女子が中学受験に走る理由
本来ならば、女子の受検倍率が2倍前後の高校の女子の定員をもっと増やせばいいのだ。
願わくば、男子の合格者数を減らさずに女子の定員を増やしてほしい、男子が定員割れしている訳ではないのだから。
女子人気が高い都立高校ではここ数年、女子の高倍率がずっと続いている。
なぜなら、多くの私立女子中高が完全中高一貫校に移行したため、女子が高校受験で選択できる私学の幅が狭いのだ。だからこそ、中学受験を選択する女子は多い。
定員自体を見直して、人気が高い都立高校の女子の募集人数を増やせばいいと思うのだけれど、なぜ、そうならないのだろう?
都立高校の定員が増えると困る人がいるから?
私立高校の経営を護るため?
オリンピックにお金がかかって教育に回す予算がないため?
なぜだろうか?
【2021.6.18追記】男女別定員について改めて考えてみた。
そして、男女別募集を撤廃したほうがよいと今は思っている。
ただ、男女の内申点の格差を是正することは必須だと思う。