特別支援教育 保護者の意識の変化

現在高校生の長男が小学校に入学する少し前、2010年前後から、国が特別支援教育に力を入れ始めた。

具体的に言うと、支援級の増設や巡回指導の導入が少しずつ進められた。

当時、特別支援教育関連の事業がいくつも立ち上がるのを目の当たりにして「特別支援教育」というものに予算がふんだんにつけられていることがよく分かった。

はたで見ていて「特別支援教育にこんなに予算がついて大丈夫なのか?」と思うほどだった。

 

要支援児が普通学級に居ずらくなっている

10年前は「普通学級にいるみんなと過ごすことで、要支援児(こういう表現はあまり好きではないけど)もみんなといっしょに成長する」という考え方がまだ許されていた。

ところが、この10年の間、特別支援教育が普及するにつれて「要支援児は支援級・支援学校に進むのが当たり前」という考え方が一般に定着した。

要支援児の親も、要支援児の親でない人も、「要支援児を普通学級に入れるのは、ほかのこどもに迷惑・要支援児本人がかわいそう・親の障害受容ができていない」という意見を持つ人が多数を占めるようになった。

現在、普通学級に通うグレーゾーン児はたくさんいるけれども、たとえば「小学校入学時に発語がない子を普通学級に通わせるようなケース」は以前より減っていると思う。長男が小~高まで通っている間、そういうケースを私は実際に一度も見かけたことがない。

つまり、要支援児が普通学級に居ることが、以前よりも許されなくなっている。教員不足による余裕のなさがその傾向に拍車をかけているのもあるのだろう。

 

「発達障害」というラベリング

ネットでも実生活でも、少しでも変わった行動をする人を「発達障害だ」とすぐに決めつける風潮が根付いてしまった。

少しでも変わったことをする人をラベリングする風潮を見るにつけ、「果たして、特別支援教育が普及することは本当に良かったことなのだろうか」と思う。

この10年、いろんな人と共生する社会から遠ざかった感がある。

今までの特別支援教育が事実上の分離教育だったことによる影響が大きいと思う。

 

こども全員が「要支援」になればいいのに

一部の医師・教師などの専門家はインクルーシブ教育の重要性を繰り返し述べている。

私も、インクルーシブ教育の理念には賛同する。

けれども、大多数の人々は「インクルーシブ教育=非現実的」だと思っているようだ。

インクルーシブ教育に否定的な人が多いのは、ここ10年の特別支援教育の在り方が大きく影響していると思う。

実際「支援級がなくなる=手厚い支援が受けられなくなる」という理由で、要支援児の保護者にはインクルーシブ教育に否定的な方が多いと感じる。

普通学級に居たって、学校生活が苦しいと感じている子も多いのにな。

普通学級がまるごと、支援級みたいに手厚い指導が受けられたほうがいいのにな。

 

国連の勧告を受けたこともあり、これからは少しずつ、インクルーシブ教育の方向に進まざるを得ないだろう(国はそう明言しないだろうが)。

ただし、20年近くかけて特別支援教育がこうなってしまった以上、もとの状態になるまでに20年、インクルーシブ教育が浸透するまではさらに20年かかるだろう。

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