インクルーシブ教育に関する雑感

新学期を迎えてから早くも1か月が過ぎた。

保育園・幼稚園の年長さんは、秋に就学時健診が予定されている。

実は「就学時健診を受ける義務」は法律上、無い

就学時健診を受けなくても就学通知というものは来るみたいなのだ。

就学通知というのは非常に重みがあるもので、憲法第26条「教育を受ける権利」に基づくものだ。自治体が「就学通知を出さない」のは憲法違反に該当する。

年長を迎えた発達凸凹くんは、普通級か支援級か支援学校かで、進学先をどれかに決めなければならない。今年は落ち着かないご家庭が多いだろう。

わたしは最近「就学時健診を考える」という本を読んだ。

この本の書評はまた別の記事にしようと思っている。

今回の記事では、この本を読んで現在の特別支援教育の在り方について、わたしが子どもの頃の体験を交えて取り上げる。

 

子どもの頃の特殊学級

大きなトランポリン

わたしが通った小学校には特殊学級(今でいう特別支援学級)が併設されていた。

普段の授業では特殊学級と交流はなかったが、学校行事は特殊学級の子どもたちと一緒に活動していた記憶がある。

特殊学級には大きなトランポリンやボールプール、バランスボール等、子どもたちにとってすごく魅力的な遊具が設置されていた。

 

特殊学級の入り口は普段は施錠されていて自由に入れなかった。

けれども、たまに鍵がかかっていないときもあった。

そんなときは友達と一緒に特殊学級に忍び込んで、遊具でよく遊んだものだ。

特に大きなトランポリンは当時なかなかお目にかかれないもので、トランポリンの上で飛び跳ねると大きく跳ね返るあの感触をわたしは忘れることができない。

わたしは特殊学級に忍び込んで遊ぶのがすごく楽しかった。

もちろん、一度だけ特殊学級の先生に見つかって大目玉を食らったこともある。

けれども、特殊学級に忍び込んで魅力的な遊具で遊んでいた子どもは、わたしたちだけでなかったはずだ。

 

図工の授業

わたしが小学校に通っていた当時の特殊学級には言葉が全く話せないお子さんや、言葉が話せても意思の疎通が難しいお子さんが在籍していた。

そんな中でわたしは、特殊学級に在籍していた一人の少女のことが印象に残っている。

わたしが小学校高学年のとき、一人の女の子が特殊学級に入学してきた。

その女の子は当時、言葉が全く話せなかった。

見た目は言葉が話せないようにはとても見えない、美しい女の子だった。

その女の子は図工の時間によく図工室に遊びに来た。

図工の先生は「彼女は絵が大好きなんだ。みんなが絵を描いているのを見るのが好きだから、静かに絵を見せてあげてね。」とわたしたち生徒に言った。

その女の子はいつもふらっと図工室に入ってきては、黙ってみんなが描いた絵を見て、いつの間にか図工室を出ていった。

図工の授業中であるわたしたちは、女の子が時折教室にふらっと入ってきても特段何をすることもなく、いつもの風景だと思って授業を受け続けていた。

当時は、特殊学級に在籍しているお子さんが図工室に忍び込んで大好きな絵を見ることができるような、ゆったりとした時間が流れていたのである。

 

昔の特殊学級

わたしが通っていた小学校にあった特殊学級は今では「特別支援教室」と名前が変わり、当時在籍していたような、言葉が全く話せなかったり意思の疎通が難しい子どもたちは、もはや特別支援教室にはいなくなった。

その代わりに、軽度の発達障害の子どもたちがその特別支援教室に通っている。

今では、言葉が全く話せなかったり意思の疎通が難しいお子さんたちの多くは、小学校内の支援学級ではなく特別支援学校に通うようになったのだ。

 

 

分ける教育=インクルーシブ教育?

「就学時健診を考える」という本を読んで改めて思ったこと。

日本では昔に比べて、障害を持つ人たちとの関わりが少なくなっているということだ。

就学前は「発達支援センターや療育機関」に通い、その後「特別支援学校」に就学して、放課後は「放課後デイサービス」で過ごせば、生まれてから成人するまでの間ずっと、普通学級に通う子どもたちと接する機会がない。

確かに、特別支援学校では手厚い支援が受けられるという理由で特別支援学校を希望する人が増えているのも理解できる。

けれども、最初から特別支援学校に通えば、地域の人たちとの関わりがまるでなくなってしまう。

ちょっと前までは、支援級や支援学校に通う生徒が、普通学級に通う子どもたちがたくさん在籍している学童クラブに通うことは普通だった。けれども今ではそのような生徒は少なくなってしまったのだろうか。

もちろん、就学前に加配をつけたうえで幼稚園に通うお子さんもいるだろう。けれども、加配をつけてもらって幼稚園に通える子どもばかりではない。

公立幼稚園や公立保育園が発達障害児の多くを受け入れている自治体も多い。

次男の幼稚園面接のときに気づいたのだが、最近、私立幼稚園は面接時に発達障害児を選別するための試験(行動観察)を取り入れているところが多い。

「行動観察」は私立小学校の受験ではごく当たり前の試験科目になっている。

「行動観察」が私立幼稚園の受験で当たり前のように行われるようになってきている。

もちろん、幼稚園側は建前上は発達障害児を選別しているとは認めないだろうが、実質は選別していると思う。

要加配児童を園児として受け入れている園は例外として、手間がかかる子どもはできるだけ排除したいのが幼稚園側の本音だろう。

面接で発達障害児(疑い)を振るい落とすような幼稚園に入園すれば、その後、小学校・中学・高校・大学と、障害を持った人たちと接する機会もなく成人する。

これは結構怖いことだ。

以前はわたしたちと同じ校舎で学んだ人たちが、今は最初から別のところに分けられているのはやっぱり変だとわたしは思う。

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