「ウチの子の中学は内申点がとりづらい」・「ウチの子の中学はレベルが高くて、内申点が低くつけられて不利」という話をよく聞く。
こういう話を聞くと今は昔に比べてそんなに内申点がとりにくいのだろうか?と思う。
東京都の内申制度を色々調べてみると、内申のつけ方に関しては、親の中学時代とはかなり違っている。
内申のつけ方が昔と違っているので、内申点の数値そのものを昔と比較することができない。
とはいえ、内申点がとりづらいという話は本当なのか検証してみたい。
(その1)絶対評価と相対評価
昔は相対評価
親世代(30年以上前)で東京都の都立高校受験を経験した人なら知っていると思うが、昔は中学校のひとつの学年で「5」「4」「3」「2」「1」の割合が厳格に決められていた。
つまり、親世代では、ひとつの学年で「5」が7%、「4」が24%、「3」が38%、「2」が24%、「1」が7%と決められていた。
だから、たとえば1年生が100人いる場合、「5」がもらえるのは100人中7人だけ。
一方、100人中7人には「1」が必ずつけられてしまう。
その年にたまたま優秀な生徒が多かった場合、他の中学にいれば「5」がつく生徒でも「4」がついてしまうし、授業態度が悪くなくてもテストの成績が悪いだけで「1」がついてしまうことがあった。
この点については昔のほうがシビアだ。
今は絶対評価
これに対して、東京都の公立中学では、今は内申点は絶対評価だ。
絶対評価の場合、たとえば、その年にたまたま優秀な生徒が多いときは「5」をたくさんつけることができる。
また「1」をつけなくても制度上問題はない。
とは言うものの、あまりにもたくさんの生徒に「5」をつけたりすると、学校や教育委員会等から後で理由を問われるのだろう。
だから、その年にたまたま優秀な生徒が多くても、教師はある程度控えめに内申点をつけるかもしれない。
それゆえ「レベルが高い中学は内申が不利」とよく言われるのだろう。
(その2)昔より高めの内申点
東京都教育委員会は、東京都内の公立中学3年生の通知表の点数の調査結果を公表している(都内公立中学校第3学年及び義務教育学校第9学年(平成30年12月31日現在)の評定状況の調査結果について)。
上の表によれば、絶対評価により、東京都の公立中学の内申点は昔に比べ総じて高くつけられているようだ。
つまり
・内申「5」・「4」・「3」の割合が昔より高い(昔は「5」は7%、「4」は24%、「3」は38%だった)
・内申「2」・「1」は昔に比べてかなり少ない(昔は必ず「2」を24%、「1」を7%つけられた生徒がいた)
・内申の平均はおおよそ3.5(昔はオール3が平均だった)
・内申「2」・「1」があると、私立高校の推薦にはかなり不利
である(参考記事:【通知表】オール3は「平均」「普通」ではない )。
なお、以下に説明するポイント3にも関係するが、今は昔に比べて内申点が高めにつけられているだけで、公立中学の生徒の学力が昔よりも高くなったわけではないと思う。
(その3)中学受験の影響
東京都の都立高校入試で忘れてはならないのは中学受験の影響だ。
特に東京23区内では、中学受験で相当の割合の生徒が国私立中学や都立中高一貫校に進学する。
国私立中学や都立中高一貫校に進学する割合は地域によって異なるが、東京都ではおおむね15%(東京23区内では約20%)は公立中学には進学せず、国私立中学・都立中高一貫校に進学する。
国私立中学に進学する生徒の全員が成績上位者であるとは限らないけれども、国私立中学や都立中高一貫校に進学する生徒のうちかなりの割合の生徒は、公立中学に進学していれば成績上位者になるだろう。
公立中学に在籍する生徒(母集団)のレベルが、親世代より下がっているのは間違いない。
親世代では、国私立中学に進学する生徒は今ほど高くなかった。
都内にある私立中学も今ほど数が多くなかった。
それを考えると、今は親世代よりも内申点がとりやすくなっているのかもしれない。
実際にそうなのか、長男が公立中学に入学してからまた検証してみたい。