長男が通う都立高校は進学校じゃないので、授業の進度はゆっくりである。
数学の授業に関しては、このゆっくりな進度が長男に合っていると思っている(高校生:数学が好きになってきた)。
進度がゆっくりだから、何度も繰り返して数学の演習問題を解く時間が確保できて、理解をじっくりと深められるのだ。
高校の頃、数学の授業はじっくり考える暇もなくあっという間に終わったという思いがある私からすると、長男は数学をじっくり学べて羨ましい。
一方、私立公立問わず、進学校では数学の授業は矢のようなスピードで進む。
数学の先取り学習が大学受験に有利だからだ。
ところが、進学校ではこの先取り学習についていけない者がたくさん出る。本当にもったいないことだと思う。
高度な数学的思考力が必要な分野を除けば、授業進度がそんなに早くなければ、数学を毛嫌いすることがなくなり、理系分野の中でも数学色が比較的薄い分野(薬学・農学など)に進学できる可能性が出てくるからだ。
よく知られていることだが…日本の公教育は「中学校での数学の内容が薄く、高校での数学の内容が厚い」という特徴がある。
そのせいで、中学生の頃は数学の成績が良くても、高校生になると数学の授業についていけなくなる人が続出する。
「高校の数学の授業で落ちこぼれなかった人が理系に進学する」というのが、今の日本の教育の基本的な流れになっている。
でも、中学卒業レベルの数学が理解できているということはもっと重要視されていい。高校レベルの数学をもっとゆっくりと学べば、数学に苦手意識を持つ人が減るはずだ。
いままで日本の公教育は「〇年生で△△を学習する」というのに縛られ過ぎてきた。
高校になれば授業内容も深くなり、専門分野に分化していくのだから、できる人はどんどん先を進んで勉強すればいいし、ゆっくり学びたい人にはゆっくり学ぶ機会があっていいと思う。
工業高校や高専などに通っていて理系分野に強い興味がある生徒には、数学が得意でないと思い込んでいる生徒が少なくない。そういう生徒でも、数学をゆっくり学ぶことで、数学を理解できるはずだ。
数学をゆっくり学ぶ機会があれば、理系分野の大学に進学してもっと学びたい人が増えると思うと、今の教育カリキュラムは至極残念である。