昔ながらの塾の話

わたしが大学生の頃、
地元の個人塾の塾講師に応募したことがある。

そこの個人塾は、
きめ細かく、とても熱心に指導してくれると地元で評判だった。

当時は塾講師の経験がなかったわたしは、
軽い気持ちで塾講師のアルバイトに応募したのだった。

 

塾講師の面接で塾長に言われたこと

面接に出てきた塾長は穏やかな人だった。

塾講師希望だったわたしに、塾長はこう言った。

・塾講師になった以上、生徒の進路に責任を持たなければならない

・進路先で生徒の人生が決まるのだから、真剣に指導に向き合わなければならない

・進路が決まるまで、生徒の指導にとことん付き合わなければならない

・生徒が分からないことを分からないままにしてはいけない

・その日のうちに分かるようになるまで根気よく教えなければならない

至極真っ当なことばかりではある。

ただ、塾長の口調からは
「塾講師になるからには、大学生活よりも生徒の指導を優先させてほしい」
ということが伝わってきた。

要は、

「塾講師を命懸けでやる気がなければ採用しない」

と塾長は言いたかったのだろう。

わたしが軽い気持ちで応募してきたことを
塾長に見透かされていたのだ。

穏やかそうな塾長にきっぱりとそう言われたので、
正直そこまで塾講師を熱心にやろうと思っていなかった私は圧倒された。

結局、塾講師はわたしには無理だと思い、
話だけ聞いて帰ってきてしまった。

この地元密着塾はだいぶ前になくなってしまった。

昔は、こういう地元密着個人塾がたくさんあったのだ。

当時は「サービス残業」とか「ブラックバイト」という概念がなかったから、
深夜まで熱心に指導する地元密着の個人塾も多かった。

 

最近の塾

昔に比べると、今は塾も相当ビジネスライクになった。

長男を実際に個人塾に通わせていて、そう感じる。

「成績が上がらないのは子ども自身に問題がある」
のであり、
「勉強ができるようになるまでとことん付き合う」
という姿勢は、
わりと熱心な個人塾でも見られない。

まだまだ多いのかもしれないが、
塾業界でのサービス残業・ブラックバイトは昔よりは確実に減っただろう。

その反面、
昔ながらの塾の熱血塾長というのは、
ほとんどいなくなったと思う。

「手がかかる子どもに時間とお金をかけるのは労力の無駄」というのが、
最近の塾側の姿勢だ。

当たり前だろう。
塾の合格実績に寄与しない、手間ばかりかかる子どもの指導を
引き受けてくれる塾はそう多くない。

だからこそ、
昔の名残が残っているような個人塾の存在は、
長男のような手がかかるこどもを成長させてくれる場として貴重な存在だ。

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