テレビ朝日に『東京サイト』という東京都の広報番組がある。
東京都の広報番組『東京サイト』では、東京都に関するさまざまな事柄が取り上げられている。
今年10月には「魅力いっぱい都立高校」というタイトルで、特色ある都立高校が紹介されていた。
そのなかで目を引いたのが「赤羽北桜高校」である。
赤羽北桜高校
「赤羽北桜高校」は2021年4月に開校した高校だ。
以前は赤羽商業という商業科の学校だったのが、保育栄養・調理・介護福祉を3本の柱とする高校に生まれ変わった。
国家資格(調理師・介護福祉士)を取得できる
赤羽北桜高校の特徴はなんといっても、
調理科に関しては、卒業と同時に調理師の資格が取得できる(申請中)
介護福祉科に関しては、卒業と同時に介護福祉士の資格が取得できる(申請中)
ことだ。
好きな分野を勉強できて、しかも卒業と同時に国家資格を取得できて、それが仕事に繋がるのならば、それ以上嬉しいことはない。
学費が安い都立高校で、手に職をつけて調理師や介護福祉士という国家資格が得られるのは、経済的に苦しい家庭の子供にとっては本当に有難い。
2021年春の入試結果
この赤羽北桜高校、2021年春の第1回入試ではなかなかの人気だった。
推薦入試は保育栄養科・調理科・介護福祉科ともに約5~8倍の高倍率、一般入試も約1.4~2.0倍以上の倍率ということで、人気の高さがうかがえる。
赤羽北桜高校・2021年春の推薦入試(応募倍率)
令和4年度入学者選抜について | 東京都立赤羽北桜高等学校 (metro.tokyo.jp)より抜粋
赤羽北桜高校・2021年春の一般入試(応募倍率)
令和4年度入学者選抜について | 東京都立赤羽北桜高等学校 (metro.tokyo.jp)より抜粋
2022年春の入試(募集人数)
赤羽北桜高校の2022年春の入試の募集要領が発表されている。
調理科・介護福祉科は募集定員は前年度から増減なし。
一方、保育栄養科は推薦入試・一般入試ともに、募集定員が大幅に増えている(推薦入試:21名→42名、一般入試:49名→98名)。
赤羽北桜高校・2022年春の推薦入試(募集人数)
令和4年度入学者選抜について | 東京都立赤羽北桜高等学校 (metro.tokyo.jp)より抜粋
赤羽北桜高校・2022年春の一般入試(応募人数)
令和4年度入学者選抜について | 東京都立赤羽北桜高等学校 (metro.tokyo.jp)より抜粋
保育栄養科の扱い
調理科・介護福祉科については卒業と同時に国家資格が得られるので、将来そちらの分野に進みたい人にとってはお得な学校だ。
一方で、気になるのが「保育栄養科」。
調理科や介護科と違い、赤羽北桜高校の保育科を卒業しても「保育士」や「幼稚園教諭」、「栄養士」などの国家資格は得られない。
保育士や幼稚園教諭になりたい場合、高校を卒業したのち、養成校(大学・短大・専門学校)に進学する必要がある。
高卒で保育士になるには
高卒の人が保育士の資格を得るには、
・養成校(大学・短大・専門学校)に進学する
・一定の実務経験を積んだうえで保育士試験を受験する
という2つのルートがある。
養成校で資格をとる場合
卒業と同時に国家資格が得られる調理科・介護科と違って、
赤羽北桜高校の保育栄養科では卒業と同時に国家資格を得ることができない。
保育科がある高校は赤羽北桜高校以外にも全国にある。
でも、高校の保育科を卒業するだけでは保育士の資格は得られない。
この点はどの高校の保育科でも同じである。
もちろん、保育栄養科を卒業すると、養成校への指定校推薦がとりやすい・AO入試で合格しやすいというメリットはある。
ただ、少子化のせいもあり、多くの養成校では倍率は高くないし、定員割れしているところすらあるから、指定校推薦・AO入試のメリットはそんなに高くはない。
子育て支援員?
わたしが気になったのは、赤羽北桜高校の2021年度パンフレットにあった、保育栄養科を卒業した人の進路に関する記載だ。
卒業後の進路として、「大学・短大等に進学」とともに、
「卒業後→子育て支援員として就職」
とある。
つまり、子育て支援員=保育補助、ということだ。
現在、昨今の保育士不足を補うため、多くの保育園では無資格者(保育士の資格を持っていない人)を保育補助として採用している。
子育て支援員も「保育補助」にあたる。
東京都が、赤羽北桜高校の保育栄養科のみ今年の定員を倍増させたのは、「子育て支援員」という都合が良い「保育補助」をたくさん養成して、保育士不足を補うことが目的なのでは?と勘繰ってしまう。
2021年春の入試の倍率をみると、推薦入試・一般入試ともに、保育栄養科よりも調理科・介護福祉科のほうが高倍率にも関わらず、保育栄養科の定員だけ増やされている。
赤羽北桜高校の保育栄養科には、業界に都合が良い「無資格の保育補助を要請するための機関」になってもらいたくはない。
言葉は悪いが、下手をすると「若い人を子育て支援員として使い捨てするための機関」になるリスクがあるからだ。
若い人の将来を支援する学校であってほしい
保育士養成校の多くが生徒確保に苦戦している現状では、高卒→保育士試験受験というルートを支援する=養成校の生徒を奪うような施策を打ちにくいだろう。
でも、経済的な理由で進学を諦めざるを得ない生徒もいる。
赤羽北桜高校に限らず、「高校の保育科を卒業していれば、高校卒業後に保育士試験を受験するときに、保育士試験の「実技科目(ピアノとか絵本読み)を免除する」くらいはあっても良いんじゃないか。
東京都だけでは決められないことなのだろう。
高校の保育科を卒業して保育士資格(または保育士試験科目の一部免除)を与えてしまえば、保育士養成の大学や短大が生徒確保に苦労する、という業界の都合が優先されていると感じる。
でも都立高校に入学する生徒の中には、経済的に苦しくて大学・短大進学が難しい生徒も多い。
赤羽北桜高校が、経済的に恵まれない家庭の子の「保育士試験に合格して保育士になる」ルートを支援してあげられる高校であってほしい。