教科書ワークについて思うこと

ここで何度か取り上げているが、
長男が公立中学に入学して一番驚いていること、
それは「教科書ワーク」の存在だ。

程度の差こそあれ、
全国的に公立中学では「教科書ワーク」が採用されている。

主要5教科で教科書ワークを採用している公立中学は多い。

そして「教科書ワークをきちんとやり、しかも丸付けをする」ことを実行しないと、
内申を低くつけられるのが公立中学である。

いったい、いつ頃からこのような状態になったのだろうか。

一説には、ゆとり教育が始まってから教科書が薄くなり、
教科書だけでは内容が薄すぎるため、
教科書ワークが使われるようになったと聞く。

 

教科書ワークのメリット

教科書にある学習内容の定着

教科書ワークはその名の通り、
教科書の内容に沿って編纂されている。

つまり、教科書ワークは基本的に教科書の記載内容を定着させるためのものなので、
教科書と教科書ワークを連動させて勉強すれば、
教科書の記載内容をしっかり定着させることができる。

 

安価であること

教科書ワークは原則として、
学校を通してでしか購入できない。

教科書ワークは教科書の副教材なので、
市販の問題集と比較して費用がかなり安く抑えられている。

しかも、就学援助を受ける世帯には教科書ワークは副教材として無償で提供される。
いわばタダで問題集をもらえるのだ。

自学自習できること

私自身、中学時代に、中3の数学担任が教科書ワークを使う派だったので、
中3の1年間、教科書ワークを採用した授業を受けていた。

教科書ワークを使うと自分でどんどん先に予習できるので、
自学自習できて良かったという思い出がある。
だから教科書ワーク自体を否定するつもりはない。

ただ、当時は教科書ワークへの取り組みが内申評価の対象にはなっていなかったので、
担当教師が各生徒の教科書ワークの内容をチェックすることはなかった。

教科書ワークはあくまでも授業で使う副教材としての位置づけだったのだ。

 

参考書を買う必要がなくなる

教科書ワークが学校にそれほど浸透していなかった時代、
家庭で参考書を購入する・通信教育を受講する・通塾するなどの方法で
学習内容の定着を図っていた。

しかし、今のように学校で教科書ワークを一括購入してくれれば、
教科書ワークを何度も繰り返すことでそれなりに力がつく。

参考書を買ったり塾に行く余裕がない家庭にとって、
教科書ワークを使って勉強ができる点はありがたいことだ。

 

教科書ワークのデメリット

教科書ワークをキレイにやること自体が目的になってしまう

本来は、副教材である教科書ワークをどう使おうが、
学習内容を定着させることが一番大切である。

けれども、実際は、
教科書ワークを「キレイにもれなく」埋めることが内申評価につながる。

つまりは、教科書ワークをキレイにやると内申がアップするということで、
教科書ワークをキレイに埋めること自体が目的になってしまっている。

この点で、長男のように字が乱雑で細かい作業が苦手な子ども(男子に多い)には、
内申を上げるという点で、教科書ワークの使用は圧倒的に不利である。

ただ、キレイなノートを作る人が必ずしも試験で良い点数を取るとは限らないのと同じく、
教科書ワークをキレイに埋めることと、教科書の内容が定着するのとは別の話である。

こういう内申アップの小細工のせいで、
内申点は学力と必ずしも連動していない。

内申と学力は連動しないことは昔からよくいわれていた。

加えて、教科書ワークへの取り組みが内申評価に導入されたことが、
内申と学力との乖離をいっそう加速させたかもしれない。

内申が学力と連動しないことを、私立高校を含む受験業界はよく知っている。

だから、学力の指標として、
内申の代わりに模擬テストの結果の提示を求める私立高校もあるのだろう。

 

教科書ワークを選べない

本来は、子どもの性格や能力に相応しい教科書ワークを選んだほうが良いに決まっている。

けれども、
教科書ワークへの取り組みは内申点の評価として用いられているため、
同じ学年ならば同じ教科書ワークを使用するのが原則だ。

 

受け身の勉強が身につく

教科書を読み、
分からないところを自分でピックアップして、
できるようになるまで繰り返すのが本来の勉強だ。

しかし、
教科書ワークというものは、
とりあえず教科書ワークをただひたすらやって
それなりの力をつけることを目的として作られている。

たとえば国語などは、
教科書ワークに書いてある用語の意味を辞書を引いて調べ、
辞書から教科書ワークに書き写すように教科書ワークが構成されている。

その結果、「何も考えずにただ教科書ワークをやればよい」という受け身の姿勢が身についてしまう。

 

費用がかかる

教科書ワークは教科書と違い、無償ではない。

教科書ワークは副教材なので、
就学援助を受けている世帯以外は各家庭で教科書ワークを購入している。

教科書ワークは市販の問題集よりも安価であるものの、
9教科も教科書ワークを買わされるのは塵も積もれば山となり、
それなりの費用がかかるため、保護者の懐は痛い。

 

塾業界の思惑

実際に学校の先生や塾の先生に聞いてみると、
誰もが教科書ワークの存在になにも疑問を示さない。

それほど、
教科書ワークというものは教育業界に浸透しているようである。

よくよく聞いてみると、どうやら、
教科書ワークというものは、塾の先生が教材会社から依頼されて作られているものらしい(塾の先生すべてが教科書ワークの作成に携わっているというわけではないことを申し添えておく)。

つまりは、学校と塾は「教科書ワーク」を通して繋がっているのだ。

塾の先生が教科書ワークについて否定的な見解を示さないのはなぜだろう?と思っていたのだが、
教科書ワークの作成を塾の先生が担っていたと知って、なるほど納得である。

 

教科書ワークに頼る気持ちもよくわかる

これまで教科書ワークのデメリットのほうを多く挙げたのだけれども、
公立中学の先生が教科書ワークに頼る気持ちもわかる。

学力下位層や、経済的な余力がなくて塾に通う余裕がない家庭の子どもたちにも最低限の学力をつけることが公立中学には求められている。

学力下位層でもやればそれなりに実がつくという点で教科書ワークは重宝されるものだ。

一方、経済的に余力がない家庭にとって教科書ワークの費用に対して公的補助を受けられるのはありがたいことだ。

 

では我が家の長男はどうするか

では、我が家の長男はどうするか、である。

最低限のこと、
つまり「教科書ワークを全問やって提出期限内に提出すること」だけは長男に守らせようと思っているが、それ以上は求めたくはない。

教科書ワークをキレイに埋めて趣向を凝らして丸付けしても学力向上にはつながらないし、
そんなことをする暇があったら、
解きごたえがある数学の問題を1問でも多く解いたほうがよいだろう。

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