豊島岡女子の高入停止

東京都豊島区にある豊島岡女子中学・高等学校(以下「豊島岡女子」と略す)が2022年度(令和3年度)からの高校募集を停止すると発表した(豊島岡女子中学・高等学校のウェブサイト)。

同校ウェブサイトによれば、来年・再来年の高校の入学試験は従来通りの定員で募集するとのことだ。

一方で、中学校の入学試験には変更がないとのこと。

本郷・豊島岡女子と、高校募集をやめる私立高校が最近相次いでいる。

 

豊島岡女子・高校入学試験の状況

豊島岡女子は高校の入学試験結果(募集数・志願者数・受験者数・合格者数)を同校のウェブサイト上できちんと公表している(豊島岡女子2019年度高校入試結果)。

正直にデータを公表している点で好感がもてる。

2019年度の高校の入学試験結果によれば、
募集数(推薦40・一般40)に対して、
推薦80・一般414が受験し、
推薦41・一般205が合格している。

2019年度の高校入学試験では推薦も一般も倍率が約2倍である。

このうち、一般入試は募集数40に対して約5倍である205人の合格者を出している。多数の辞退者が出ることを想定しているといえる。

実際、難関国私立高校や都立上位高の滑り止めとして受験する人が多いのだろう。

東京都の高校受験の場合、成績上位の女子に相応のレベルの高校が非常に少ないと昔からいわれている。しかも、ここ30年以上の間、たくさんの学校が高入停止してから、成績上位の女子が受験できる高校の選択肢はますます狭くなっている。

今回の豊島岡女子の高入停止の発表を知り、とうとう豊島岡女子まで高入停止か、という感がある。

 

そういえば、ふた昔前の状況

私が高校受験をした30ウン年ほど前、豊島岡女子はものすごくたくさんの合格者を出す高校として有名だった。豊島岡女子は都立高校の併願校として知られており、毎年大量合格を出していた。

当時東京都で高校入試を経験した人はこのことをよくご存じだろう。

当時、豊島岡女子高校の合格者は今年の高校一般入試の合格者200人どころではなく、1,000人前後あるいはそれ以上だったと思う。

当時は、たくさんの受験生から得られる入学試験料+入学金だけでも学校は莫大な収入を得ていたはずだ。

その後、中学受験人気に乗り、豊島岡女子は今では中入生メインの難関校である。

 

私感

校風について

成績上位女子の受験校選択肢が減るという点では豊島岡女子の高入停止は高校受験生にとっては残念だ。

ただ、豊島岡女子の教育方針(勤勉・質素・礼儀正しさ)に共感して入学を希望するのは、中学受験を経て入学する生徒・ご家庭が圧倒的に多いと思う。

昔、通っている中学校に置いてあった豊島岡女子の入学案内を見て「毎日運針」することを知り、かなり驚いた。「毎日運針」は結構有名な話だと思う。

親となった今は、中学生が毎朝運針をすれば集中力が高まるかもとわりと好意的に思える。ただ生意気盛りの中学生にとって「毎日運針」は衝撃的だろうが。

難関国私立(国立付属や有名私大付属)や都立難関校の校風と、豊島岡女子の校風とは相容れないところが多いと思う。

ほとんどの国立付属・有名私大付属・都立難関校は基本的に自由闊達な校風である。

自由闊達な雰囲気に憧れて難関国私立・都立を受験したけれど落ちてしまい豊島岡女子に入学した高入生は、豊島岡女子の校風に違和感を感じるだろう。

現在、勤勉・質素・礼儀正しさを重んじる校風で女子が通える進学校はほとんど中高一貫女子校だ。このような校風に共感する人は中学受験したほうがよい。

東京都では女子が入学できる質実な校風の私立高校が少ない(国学院・国学院久我山くらいか)。

だから、高入停止は豊島岡女子にとって当然の選択かもしれない。

豊島岡女子は私立なのだから、教育方針や校風に共感する(=同校のファンである)生徒・ご家庭を増やすことのほうが大切だ。

とはいえ、校風以前に、わざわざお金と手間をかけて高校入試をしても、実績を作ってくれる高入生が少なくなったのが、高校入試を廃止する最大の原因なのだろう。

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました