年度末になって、東京都教育委員会のスクールカウンセラーの雇い止め問題が報じられた。
スクールカウンセラーを利用したことがない保護者が大多数だと思う。
わたしもスクールカウンセラーを利用したことはない。
大半の保護者は「スクールカウンセラー」=「何をやっているのか分からない人」だと思うよ。
スクールカウンセラーを知らない人が大半である以上、この議論は盛り上がらないだろう。
今回のスクールカウンセラーの雇い止め問題(概要)
東京都のスクールカウンセラーは全員が非正規の公務員であり、1年ごとに契約が更新される。
1年ごとに契約を区切る「会計年度任用職員制度」が2020年度に全国で導入されたこともあり、東京都のスクールカウンセラーが今回、大量の雇い止めになった。
東京都教育委員会の立場としては、今回のスクールカウンセラーの雇い止めは法律に基づいて適切に判断した、ということだろう。
スクールカウンセラーは好待遇
東京すくすくのウェブサイトに寄せられたコメントのなかで、元カウンセラーだという人の意見が私にとって一番しっくりきた。
元カウンセラー氏の意見を要約すると以下の通り。
とはいえ、スクールカウンセラーはほかの非正規公務員(たとえば役所の事務職や保育士などの福祉職)と比べて破格の好待遇を受けていることを忘れてはならない。
スクールカウンセラーの勤務日数は1校につき年間38日。平均週1回で日当は4万4100円(2023年度)だそうだ(東京すくすく)。
スクールカウンセラーの報酬は日当4万100円という数値から時給に換算すると時給5,000円程度かな?ちょっと数字が間違っていないか?と思うほどの好待遇だ。
同じ学校現場の非正規職員たとえば支援員と比べると破格の好待遇である。
ほかの非正規公務員とは比べ物にならないくらい好待遇なのだから、スクールカウンセラーをほかの非正規公務員と同じ土俵で評価してはいけないと思う。
そして、同じ人がいつまでも長くスクールカウンセラーとして居座るより、若い人に経験を積んでもらうために「世代交代が必要」という意見も理解できる。
「自費で相談」という選択肢もある
信頼できるスクールカウンセラーが担当になって助かっている生徒や保護者にとっては、いきなりスクールカウンセラーが雇い止めで交代になるのは困るだろう。
でも、相談者からの信頼が厚いカウンセラーならば、今後は相談者が自費でそのスクールカウンセラーに相談を受ければいいんじゃない?
カウンセリングを自費で払うならば料金はそれなりにかかる。…でも、実際、学校にいるスクールカウンセラーとの相談料は税金から出ているんだよね。
スクールカウンセラーではなく、ひとりのカウンセラーという立場で、希望者には継続して良心的な料金で相談を受けるのがいいんじゃない?
スクールカウンセラーを雇用し報酬を支払っているのは「東京都教育委員会」だ。
生徒や保護者がタダでスクールカウンセラーと相談ができるのは、東京都教育委員会がスクールカウンセラーに報酬を払ってくれているからだ。
カウンセラーは本来、相談者から報酬(お金)をもらって相談者のために相談業務を行うのが筋だ。でも、東京都教育委員会がスクールカウンセラーに報酬を払っているからこそ、生徒や保護者は無料でスクールカウンセラーに相談ができるのだ。
相談者と学校との間のねじれ構造
一方で、スクールカウンセラーは学校と相談者との間で中立の立場を求められる。
スクールカウンセラーは「カウンセラー」だから相談者の立場に立つのが筋だが、なにせ報酬は相談者ではなく東京都教育委員会から出ているから、学校の立場を無視することができないという「ねじれ構造」になっている。
東京都教育委員会から報酬を受け取りながら、学校と相談者との間で中立の立場を保ってスクールカウンセラー業務を行うのは本質的には「利益相反」だと思うが、うやむやの状態で今に至る。
スクールカウンセラーが学校現場に導入されたことで、無料で相談ができるのは有難いことだけれども、その反面、お金を払って相談をするという意識を利用者がもたなくなった。
スクールカウンセラー:学校側からの評価は?
ところが、スクールカウンセラーは学校側から評価が高い人ばかりじゃないようだ。
スクールカウンセラーが保護者との間でトラブルを起こし、そのトラブルを学校が解決しなければならないことがあるらしい。そういうのは論外だな。
学校側から評価が高いスクールカウンセラーは、学校の立場を考えて動いてくれる人なのだろう。
とはいえ、学校からの評価が高いスクールカウンセラーが、相談者からも評価が高いとは限らない。学校側の要望と相談者からの要望が相反するケースは少なからずあると思うから。
学校側からも相談者からも信頼されるスクールカウンセラーはなかなか居ないんじゃないかな。
発達検査・診断への道筋をつける役目
学校やスクールカウンセラーに都合が悪いことは新聞記事には書かれていない。
学校側が児童・生徒を発達検査・診察へと導くためのきっかけとしてスクールカウンセラーが利用されているという事実がある。
長男のことでスクールカウンセラーと面談するように担任の先生から何度も言われたことは以前も書いた。
スクールカウンセラーに相談すると発達検査に誘導されると分かっていたからスクールカウンセラーとの面談は断った。
学校側が望むとおりに、こどもを発達検査や精神児童科受診へと導けるようなスクールカウンセラーが学校から高い評価を受けるんだろうな、とそのとき思った。
スクールカウンセラーも学校側に利用されて気の毒だな、とは思うけど、学校側から高い報酬をもらっているのだから仕方ないね。
学校の仕組みを根本的に変えない限り、対症療法的にスクールカウンセラーを増やしても不登校やいじめは減らないだろう。