今回の記事は、就学に向けた電話相談という記事の続きである。
就学先の相談を教育機関から持ちかけられたら
これからの時期、来春の就学先について、保育園や幼稚園、小学校などの教育機関から話し合いたいと連絡を受ける保護者も増えるだろう。
就学先について話し合いたいという連絡が教育機関から場合、まずは「話し合いなど必要ない。我が家は普通学級への進学を希望する」旨を伝えてもよいと思う。
これで教育機関側が引きさがれば一番楽だ。
我が家も最初はそのように対応すればよかった、と後で後悔した。
ただ、たいていは教育機関側はこのまま引き下がらないことが多いかもしれない。
今回の記事は、就学先に関してや普通学級での配慮について保育園・幼稚園・小学校などの教育機関と交渉する際に知っておくとよい法律についてまとめた。
教育機関との話し合いの場で教育機関側が就学先を強引に決めようとした場合、それに反論するときの根拠になる法律を以下に記しておいた。
教育機関との話し合いを有利に進めるには
丸腰で話し合いに臨まないこと
ある程度の理論武装してから教育機関との話し合いに臨んだほうがよい。
そうしないと「お宅のお子さんの進路は通常こうです」と教育機関側が勝手に進路を決めてかかってきた場合、とっさに反論できない。
「就学先の選択に関しては本人・保護者の意向を考慮しなければならないと法律で定められている」・「学校側は障害児に対して合理的配慮をしなければならないと法律で定められている」ことだけでも知っていれば、教育機関側が自分たちに都合が良い方向に話を持っていくのを見抜くことができる。
法律を知っていると匂わせること
高等テクニックではあるが、「こちら側は法律を知っている」ことを匂わせておくと、教育機関側は強硬な態度に出にくくなると思う。
ただし、話し合いの場でいきなり法律を提示すると教育機関側はビビるので、教育機関側がどうしても支援級・支援学校への就学にこだわる場合に限って、上に挙げた法律を提示することをおススメする。
支援級・支援学校への転籍を勧められた場合
障害者教育法第16条には「インクルーシブ教育を踏まえた教育施策を講じなければならないこと」・「就学先の決定にあたっては子どもと保護者の意向を尊重しなければならないこと」が規定されている。
支援級・支援学校への転籍を強引に勧められたら、障害者教育法第16条に基づいて「就学先については子ども・保護者の意向を尊重しなければならないと法律で定められています」と教育機関に反論する方法がある。
参考:障害者教育法第16条【教育】
2.国及び地方公共団体は、前項の目的を達成するため、障害者である児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない。
普通学級での配慮を教師が拒否した場合
普通学級に在籍している子どもについて、たとえば、板書が苦手だから席を前のほうにしてほしい・細かな字を読むのが苦手だから資料は大きな字で印刷してほしい等の合理的な配慮を学校側が求められた場合、障害者の権利に関する条約第24条に基づき、学校側は合理的な配慮をしなければならない。
教育機関側が合理的な配慮を拒否した場合、障害者の権利に関する条約第24条に基づいて「教育機関は合理的配慮をしなければならないと法律に定められています」と教育機関に反論することをおススメする。
参考:障害者の権利に関する条約第24条【教育】
2.締約国は、1の権利の実現に当たり、次のことを確保する。
(c)個人に必要とされる合理的配慮が提供されること
なぜこの記事を作ったのか
2014年に日本が障害者の権利に関する条約を批准したのに伴い、障害者教育法・障害者差別解消法等の法律が施行されてから5年を経過しようとしている。
法律が整備されたおかげで、障害を持つ子どもたちが小学校で学習する際に合理的配慮を受けられやすくなっていると思いきや、我が家の経験(新学期と新しい担任)から言うと、相変わらず合理的配慮を拒否する/渋る教師が存在するし、願わくば支援級/支援学校へと転籍させるよう小学校側は画策していたりする。
このままだと、日本の教育界は、障害者の権利に関する条約が掲げるインクルーシブ教育とはどんどん乖離していき「障害児を分ける教育」が進んでいくと危惧する。
そこで、就学先について教育機関と相談する予定がある保護者の方々に向けて、教育機関との話し合いを有利にすすめるための参考になればと思い、今回の記事を作成した次第である。
最後に
わたし自身は、どんな場合でもどんな状況でも、発達障害の子どもは普通学級に通うべきだとは思ってはいない。たとえば不安がとても強いタイプのお子さんや音などの刺激に弱いタイプのお子さんは普通学級では刺激が強すぎる場合もあるだろう。
子ども本人が普通級での生活に強い不快感・不安感を示すならば、支援級や支援学級を選ぶのもひとつの方法だとわたしは思っている。どこに就学するかは、あくまで子ども自身をベースにして考えなければならないだろう。